妻の名は塔子。私の知らない女。
妻は頷くだけである。どんな音も匂いも吸い込み、私を置いていく。
私が強く打ち付けると、まだ見たことのない鳥のように、妻は小さく鳴いた。
突然の雨だ。
私は傘を掴み決して会えない予感を抱いて、出掛けたばかりの妻を追う。
■photo by Koki Nishida
※週刊ポスト2016年8月5日号
妻の名は塔子。私の知らない女。
妻は頷くだけである。どんな音も匂いも吸い込み、私を置いていく。
私が強く打ち付けると、まだ見たことのない鳥のように、妻は小さく鳴いた。
突然の雨だ。
私は傘を掴み決して会えない予感を抱いて、出掛けたばかりの妻を追う。
■photo by Koki Nishida
※週刊ポスト2016年8月5日号