米大リーグ・マーリンズの地元・マイアミで道行く人から次々と祝福の言葉を贈られる日本人──。
「歩いているだけで写真をせがまれて……」
そう語るのはメジャー通算3000本安打フィーバーで全米の注目を集めるイチロー(42)……ではない。モノマネ芸人のニッチロー’(37)だ。打席に入る際のイチロー独特のルーティーンを“完全再現”する芸で一躍有名になったお笑い芸人である。モノマネだけでなく、顔までそっくりなので地元・マイアミのファンも区別がつかなかったようだ。
ニッチロー’は5年前からイチローのモノマネを始め、度々渡米してはイチローの試合を観戦している。
まだイチローがマリナーズに所属していた2011年、試合観戦中にフェアの打球をファウルボールと勘違いし、スタンドから手を伸ばして捕球してしまったことがあり、退場処分になりかけた。
このときニッチロー’があまりにイチローに似ていたため、アメリカのスポーツ専門テレビ局・ESPNが大々的に報じ、ニュース番組でも繰り返し取り上げられた。イチローに便乗する形でいきなり全米の注目を集めたのである。
そんなニッチロー’はイチローのメジャー通算3000本安打を見届けるため、7月21日から再び渡米することを決意。今回はユニフォーム姿で観戦したところ、周りのファンに試合そっちのけで注目されてしまい、“私服観戦”に変えなくてはならないハプニングもあった。
「マイアミに来て、あらためてイチロー選手の人気、凄さを実感できました。イチロー選手が打席に立つたびにスタンディングオベーションでイチローコールが起こるんです。私がイチロー選手について語るなんておこがましいですが、これからも応援し続けます」
惜しくも3000本安打まで残り3本というところで帰国の日が来てしまったというニッチロー’。
「3000本の特需で仕事は増えましたが、笑いの打率はイチロー選手より低いままです……」
そう自虐的に締めくくったが、無名の芸人の存在を全米に知らしめてしまうほどのイチローのすごさを改めて実感させられた。
※週刊ポスト2016年8月12日号