大手メディアは東京都知事選挙報道で、小池百合子氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏の“主要3候補”ばかりを取り上げた。
しかし、面白いのは言いたい放題の“その他の候補”たちだった。
有権者から最も“ヤバい”と思われていた候補者は後藤輝樹氏だろう。選挙ポスターは軍服姿で、自分の名前はなぜか豆粒のような小さい文字。政見放送では「俺がシコれば世界は変わる」「射精して、顔面発射だよバカ野郎!」とラップ調で下ネタを披露し、NHKでは途中で音声を一部削除された。
だが実際に取材に行くと、印象はガラッと変わる。選挙活動が地味すぎるのだ。7月24日に 町区民館で行なわれた個人演説会では、10人もいない聴衆を前に、
「街頭演説をやる予定はありません。一度目黒区長選の時にやったけれど、あまりにも誰も聞いてくれないので心が折れそうになって」
「誰かに相談するとそんなことやめろっていわれるからサプライズで出るのが好きです。というか、友達もいないので誰にもいわないで出ます。親がどう思っているのかは……聞いたことないです」
と気弱な発言ばかり。会場に区民館を選んだのは「無料で使えるから」らしい。ペットボトルに口をつけて水を飲めないほどの潔癖症で、現在は便利屋として草むしりなどをして生計を立てているという。
そんな彼の演説会になぜか乱入してきたのが、同じく都知事選候補の高橋しょうご氏。本人いわく、「各候補を応援して回っている」というのだが、だったらわざわざ立候補する必要もないんじゃ……このあたりになると感性が独特すぎて理解不能だが、後藤氏はそれに気をよくしたようで、「ふたりで都知事になろう。ユニット組んで『しょうご&てるき』でやろう」などと言い出し、最後は2人の手でハートマークを作り、ポーズを決めていた。
痛烈な権力批判から意味不明なパフォーマンスまで、やっぱり都知事選はとにかく、見る者を飽きさせない。
※週刊ポスト2016年8月12日号