元五輪の水泳選手から俳優に身を移した変わり種がいる──。バルセロナ五輪の400メートル個人メドレーで日本人初の決勝進出を果たした藤本隆宏(46)はなぜ、縁もゆかりもない世界に飛び込んだのか。
「記録が伸び悩み、第2の人生について考えていた頃、ミュージカルを観に行き、挑戦したいと思ったんです」
アトランタ五輪を目指しつつ、1995年秋に劇団四季のオーディションに合格。代表選考会に落選すると、俳優1本に絞った。
そこから苦難の道が始まる。与えられるのは端役ばかりで、年収20万円という年もあった。台詞が一言あるかないかの日々は10年以上に及んだ。
2008年、NHKドラマ『坂の上の雲』のオーディションに合格し、飛躍のきっかけを掴む。2012年には大河ドラマ『平清盛』に出演、そして現在は『真田丸』で真田家の家臣を演じる。偶然か必然か、4年周期で大仕事が回ってくる。
「五輪を通して、『努力すれば必ず答えが出る』と実感できました。悔しい時期を長く経験しましたから、一言の台詞も無駄にしたくありません」
(敬称略)
●撮影/鈴木正美
※週刊ポスト2016年8月12日号