「都議会のドン」とも呼ばれ、自民党東京都連の幹事長を務める内田茂・東京都議(77)。内田氏の力の秘密のひとつが、都庁職員や都議たちに「オレは都知事より都政を動かせる」という意識を植え付けていることだ。
昨年12月、東京・港区芝の名刹、増上寺で営まれた内田氏の夫人の通夜と葬儀の参列者は、その盛大さに圧倒された。葬儀委員長を務めたのは安倍首相。首相はその日(16日)、防衛省での自衛隊高級幹部会合や皇居での宮中昼食会などの公務の合間を縫って通夜に駆けつけた。東京選出の大西英男・自民党代議士はフェイスブックに驚きをこう書き込んだ。
「私は長いつきあいである内田茂先生の涙を初めて見た。(中略)安倍晋三総理が葬儀委員長を務められ、麻生財務大臣、二階総務会長、舛添東京都知事をはじめ、政界の重要人物たちが次々に弔問に訪れた。弔問客は引きも切らなかった」
総理大臣が都議夫人の葬儀委員長を務めたのは異例中の異例といっていい。しかも、参列者は政界、経済界など数千人にのぼった。参列した都庁関係者はこう語る。
「東京五輪を控え、都内では新国立競技場の建設をはじめ、各地で再開発計画など巨大事業が進められており、内田さんはその利害調整の要にいる。都庁の役人は内田さんに相談することで国への根回しを期待し、企業は計画を予定通りに進めてもらえる。
内田夫人の葬儀にはゼネコンや五輪関係者が押し寄せたが、そこに総理がわざわざ参列したことで本当に知事以上の力があることを見せつけた」
安倍氏はまだ小泉政権の自民党幹事長代理だった2005年の東京都議選で応援の現場指揮を取り、10人の新人を当選させて都議会に“安倍チルドレン”といわれる勢力をつくった。このとき、内田氏の実力を目の当たりにし、太いパイプができたとされる。
その「総理の威光」が東京都のドンをさらに一層輝かせているといえる。
※週刊ポスト2016年8月12日号