「影の都知事」とも、「都議会のドン」とも呼ばれる内田茂・東京都議(77)。自民党東京都連の幹事長を務める(8月4日に都知事選の敗北の責任をとり辞意表明)。無名に近かったドンの存在がクローズアップされるきっかけとなったのが、小池百合子氏の東京都知事選出馬会見の言葉だった。
「(都連は)ブラックボックスだ」
都連の体質をそう批判して『都議会の冒頭解散』と『利権追及チームの創設』を公約に掲げ、さらに「箱」の中身に踏み込んだ。
「なぜここ2代、猪瀬直樹さん、舛添要一さん。短期間で知事が替わってきたのか。舛添さんの湯河原に毎週行くというのは論外だが、お2人とも大変有能でビジョンも明確なものをお持ちだ。ところが、いつしかこのような状況に短期間で陥ってしまうのはなぜなのか。つまり、誰かにとって都合が悪い、もしくは不都合なときに捨てられるということが続いてきたように思う」
都連の会長代理を務めた小池氏は、内田氏の実力をよく知っている。名指しこそしなかったものの、「都議会のドンやひと握りの幹部による都政運営を改め、都民のための東京大改革を進めます」とツイートし、ブラックボックスの中心に内田氏がいることを強く匂わせた。
その内田氏の口癖は「知事と議会は二元代表制なんだ」──である。内田氏が推した増田寛也氏も出馬会見で、何度も「二元代表制が原則」だと強調した。
二元代表制という言葉は憲法にも地方自治法にも出てこないが、知事と議会はどちらも選挙で選ばれる有権者の代表で、知事をチェックする役割の議会は知事と対等な力を持つという意味で使われる。
事実、都政は、たとえ都知事が何人交代しようと、127人の都議会に君臨するドンの意向に左右される議会の体質と構成が変わらない限り、改革が容易にできないという問題を抱え続けている。
※週刊ポスト2016年8月12日号