国内

ヘイトスピーチ 「街頭パフォーマンス」から次なる闘争に

桜井誠氏は都知事選に出馬した(写真:ZUMA Press/アフロ)

 2006年に誕生し、在日朝鮮人の「特別永住資格」や「通名使用」(*注)を“特権”と訴えてきた在特会(在日特権を許さない市民の会)は、“ヘイトスピーチ”と呼ばれる差別的なデモ活動が社会問題と化していた。こうした行動へのカウンターとして結成されたのが「しばき隊」だ。ヘイトスピーチ対策法施行など新たな動きもあるなか、両団体の現在を追った。

【*注/「特別永住者」とは戦前から日本に在留する韓国人・朝鮮人・台湾人の「入管特例法」を根拠とする法的地位である。彼ら在日外国人は、本名とは別に、日本国内で通用する「通名」の使用を許されてきた。】

 在特会前会長・桜井誠氏が6月に出版した『大嫌韓日記』(青林堂)は、ほぼ全編にわたって、しばき隊への悪口雑言で占められている。同書によれば、しばき隊とは暴力をちらつかせては愛国者に脅しをかけるチンピラ集団だという。しばき隊に向ける憎悪の激しさは十分に伝わってくる。無理もない。在特会を「つぶす」と公言してきたしばき隊は、まさに天敵以外のなにものでもないはずだ。

 一方のしばき隊は、正式名称が「レイシストをしばき隊」。文字通り、レイシスト=差別主義者集団を「しばく」ことを目的に、2013年1月に結成された。呼びかけたのはフリー編集者の野間易通氏。「隊員募集」の告知をネット上で行い注目を集めた。当時の告知サイトには次のような記述がある。

〈(在特会は)デモの前後に近隣の店や通行人に暴言を吐いたり、いやがらせをしたり、ときには暴行を働く場合があります。「しばき隊」の目的は、彼らが狭い商店街でそうした行動に出た場合にいちはやく止めに入ることです〉

 実際、初期のしばき隊はデモ現場の「表」に立つことはなく、メンバーは路地裏に潜み、在特会が“お散歩”と称する示威行為に参加した在特会員を取り囲んで“説教”するといったことに注力していた。ちなみに結成メンバーは、野間氏同様、反原発運動に参加していた者、音楽・出版関係者が多かったという。その後、反在特会の運動が盛り上がり、一般の“カウンター”参加者としばき隊との区別が難しくなる。

「それこそがまさに野間氏の戦略でもあった。誰がしばき隊であるのかを曖昧にすることで、実際は数十人程度の勢力を必要以上に大きく見せた」(関係者)

 在特会などがカウンター参加者そのものをしばき隊と称しているのは、まさにそうした「戦略」に乗せられた結果にほかならない。

 実は結成から半年程度でしばき隊は解散している。現在は「C.R.A.C.」(対レイシスト行動集団)と名称を変え、カウンター活動のみならず、国会、地方行政へのロビーイングなどに力を入れている。

 先の国会で成立した「ヘイトスピーチ対策法」もまた、こうしたロビーイングの成果のひとつだといわれている。しかしいまだに「しばき」といった名称から連想される暴力的なイメージは消えない。

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン