甲子園中継で出身県の高校を応援して郷愁に駆られる──そんな時代は遠くなりにけり。郷土の代表とは名ばかりで、地元出身者がほとんどいない「外人部隊」の高校が甲子園の常連校となって久しい。高校野球に詳しいスポーツライターがいう。
「東北地方の強豪校の練習中に、関西弁や関東弁が飛び交っても違和感を覚えなくなりました。今年の出場校でいえば、八戸学院光星(青森)や秀岳館(熊本)は、スタメン全員が県外出身者という試合もありました。新記録となる夏の大会10年連続出場を決めた聖光学院(福島)も、主力の多くは県外出身者です」
地方の私立高校にとって甲子園に出る野球部は生徒を集める広告塔となる。そうした高校は県外から有望な選手を迎え入れるためにあらゆる手を尽くす。
2007年に授業料などが免除される「野球特待生」が、日本学生野球憲章で禁じられているにもかかわらず横行していることが発覚して社会問題となり、それを受けて2012年に野球特待生を各学年5人までとする新たな制度がスタートした。だが、早くも制度は形骸化しているという。
在阪私立高校の野球部監督が打ち明ける。
「“成績優秀”や“母子家庭による経済的理由”ということにして特待生に指定すれば、5人に数える必要はない。授業料や入学費もタダにできる。抜け道はいくらでもあります」
特待生問題の表面化と同時に、有望な中学生を集めて入部者を選抜する「セレクション」も禁止された。だが、皮肉なことにそれが金銭を受け取って有望選手を強豪校に送り込む「野球ブローカー」の活動の場を広げることになった。
高野連はブローカーによる斡旋入学を禁止しているが、ここにも“抜け道”がある。
「中学年代の硬式野球のクラブチームを対象とした全国大会は、“有望選手の品評会”としてブローカーたちが青田刈りを繰り広げています。彼らの多くは有名高校から“スカウト”や“コーチ”という非常勤の肩書きを与えられている。高校に所属する者であれば、スカウト行為は禁止されないからです。
彼らは“給与”という形で斡旋の報酬を得ています。報酬は月給制もあれば、選手1人を入部させるごとに35万~50万円という歩合制もある」(前出・スポーツライター)
※週刊ポスト2016年8月12日号