8月に入り、お盆シーズンが間近だ。お盆休みを利用し、地方にある実家に帰省して、お墓参りするという人も多いだろう。ところが、中高年を中心に頭を悩ませているのが、その「お墓」の問題だ。都心の一極集中化に加えて、少子高齢化により、墓守をする人が少なくなり、先祖代々のお墓が無縁化の大ピンチを迎えているのだ。お墓を巡る問題は、これに限らず多岐にわたる。それらを解決するヒントとなるのが、葬儀・お墓コンサルティングの第一人者である吉川美津子氏がこのほど上梓した『お墓の大問題』(小学館新書)だ。吉川氏にお墓に話を聞いた。
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──最近、夫と同じ墓に入りたくないという妻が増えているそうですが。
「縁もゆかりもない土地にある夫の先祖たちと同じ墓に入りたくない。夫の家族と折り合いが悪いなど様々な理由があります。実際に拒否することはできます。“死後離婚”という言葉があります。
これは法的に死後離婚できるわけではないが、配偶者の親族と縁を切りたいために『姻族関係終了届』を出す人が増えています。これは、離婚と同様に配偶者の血縁者と親戚関係を修了するというもの。配偶者の父母や兄弟姉妹等の扶養義務も例外を除いてなくなります。ただ、厄介なのは墓の名義人が仮に妻だった場合です。その場合、夫の遺骨だけでなく、先祖代々の遺骨も妻が所有することになり、管理する義務も生じてしまうのです」
──子どもがお墓の承継を拒否するケースもあると聞きます。
「墓の承継は財産の承継とは異なり、墓守という負担を背負うことになります。子どもが都心に家庭を持っている場合、田舎のお墓の管理をするというのは手間もお金もかかります。
離婚・再婚等で家族関係が複雑なケースもあり、それで承継を拒否する人も増えているのですが、悲観する必要はありません。神仏や祖先の祀りを祭祀といいます。祭祀に関連する家系図や仏壇や墓地などを祭祀財産といい、これらの相続については、金品の相続とは切り離されて考えられているからです。
祭祀財産の承継者については、民法に以下のような条文があります。1,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。つまり、遺言で子どもを祭祀承継者と指定すれば、本人がどう思おうが指定されてしまうのです。また拒否権もありません。ところが、そこまでして子どもに負担をかけたくないという親御さんが増えているから悩みが尽きないのです」
──ある調査によると無縁墓になると考えている家庭は5割を超しています。
「無縁墓の問題は今に始まったことではありません。しかし、それが顕著になった背景には、日本の核家族化があります。団塊の世代など現在60代後半から中盤にかけての世代は、兄弟姉妹が多く、墓守の問題が顕在化することは少なかった。ところが1960年代からの人口の都市集中化により、親世代は生まれ育った場所で死を迎える人が少なくなりました。子世代は年に数回、故郷に行く程度でしょう。菩提寺があった土地への帰属意識も薄れていくのも当然です。地域を離れ、家を手放し、墓を手放すという流れは、ごく自然な流れなのです。加えて、少子化も無縁墓増加に拍車をかけています」