〈アベ政治を許さない〉──そう大書された紙を広げる男性たちの横で、右手を挙げて微笑むアッキーこと安倍首相夫人の昭恵さん。参院選さなかに、そんな“問題写真”が写真投稿アプリ・インスタグラムに投稿された。反対派のネガキャンかと思いきや、「昨日はこんな人たちとも写真を撮ったり、握手をしてみました」というコメントをつけて投稿したのは当のアッキー自身だ。
昭恵夫人といえば、これまでも「家庭内野党」を掲げて原発反対をはじめ、TPPや消費増税にも反対するなど、総理の政策に異を唱えてきた。
「主人には『戦争をするときには、私を殺せ』って言ってある」
雑誌のインタビューでそう語って物議を醸したこともある。参院選で野党を蹴散らした安倍首相にとって、「いまやコントロールできない最強の野党は昭恵夫人だけ」とも言われる。
官邸内にはもう一人、“家庭内の与野党対立”がある。安倍側近の世耕弘成・官房副長官と夫人の林久美子・民進党前参院議員の夫婦だ。こちらは本当に与野党に分かれ、林氏は先の国会で安倍首相の財政政策を「無責任」と厳しく追及したが、参院選で落選した。自民党の安倍側近議員が語る。
「世耕夫人が国会で安倍批判をしたとき、総理は“あの質問は何だ。世耕はかみさんの首に鈴もつけられないのか”と非常に不機嫌だった。だから参院選で総理は自ら林氏の対立候補の応援に入って落選させた」
さすがに“子分のかみさん”の批判は我慢がならなかったようなのだが、そんな安倍首相も、アッキーの言動には鈴をつけることができないから永田町での政治力と、家庭内の力関係は比例しないようだ。
もっとも、アッキーは参院選で内助の功を発揮した。投票日前日、夫の代わりに沖縄に入り、苦戦していた島尻安伊子氏(落選)の応援演説に立つと、
「巷では、安倍晋三は独裁者で憲法を変えて戦争をするんじゃないかと言われています。でも決してそんなことはありません!」
と島尻支援を訴えたのだ。それだけに、安倍側近は「昭恵夫人の家庭内野党宣言は安倍政治への不満をかわすためのガス抜きになっている。総理もそう考えて自由に発言させている」と解説するが、“天性の自由人”であるアッキーがそんな計算ずくの発言をしているのかどうか。
※SAPIO2016年9月号