甲子園常連の地方の強豪校には、地元出身者がほとんどいないことが多い。かつて日本学生野球憲章で禁じられていた「野球特待生」が横行していることが発覚し、2012年に各学年5人までとする新たな制度がスタートしたが、すでに形骸化している。「成績優秀」などといえば、実質的には野球特待生を入学させることが可能なのだ。禁じられている野球ブローカー(報酬あり)による斡旋入学も裏で横行している。監督自ら選手獲得に乗り出すことも多い。
「大阪桐蔭(大阪)や明徳義塾(高知)の監督は、北海道から沖縄まで精力的に移動して有力選手を視察しています。今や強豪校の監督に問われるのは指導力というより、優秀な選手をどれだけ入部させられるかというスカウト力です」(在阪野球部監督)
そんな“名監督”として脚光を浴びているのが、今春のセンバツ高校野球でベスト4に入り、今夏も甲子園出場を決めた秀岳館の鍛治舎巧(かじしゃたくみ)監督だ。
中学硬式野球5冠を達成したオール枚方(ひらたか)ボーイズ(大阪)で指揮を執っていた鍛治舎氏が秀岳館の監督になったのは2年前。その「5冠」メンバーをごっそり熊本に引き連れていったのである。
今年のセンバツではレギュラー中7人がオール枚方ボーイズ出身で、ベンチ入りメンバーに熊本県出身者はゼロ。“第2大阪代表”と揶揄する声もあがった。
「秀岳館は2001年まで八代第一高校という校名で、OBに松中信彦(元ソフトバンク)や国吉佑樹(DeNA)などを輩出してきた。地元の子供中心で甲子園を目指してほしいというOBの声もありますが、鍛治舎監督のおかげで学校の知名度がグンと上向いたのは間違いなく、批判的な声はかき消されています」(スポーツ紙記者)
※週刊ポスト2016年8月12日号