高校野球の甲子園大会に出場が決まると、高校はかかる費用が莫大なため、金策に走り回る。OBが多く、寄付金が多く集まる高校はまだよいが、歴史の浅い私立高では、出場するたびに学校経営が逼迫する“甲子園貧乏”に陥ることもある。そうした出費を覚悟してでも多くの高校が甲子園を目指すのは、見返りとして膨大な広告効果を期待しているからだ。
「ある九州の私立高校は、定員割れだった入学希望者の倍率が甲子園出場の翌年に4倍に跳ね上がった。さらにOBがプロ野球に進めば、野球部への入部が飛躍的に増える」(スポーツジャーナリスト)
文部科学省によれば、平成27年度の私立高校の授業料などの年間合計金額は約72万円。1学年300人の高校ならば、2億1000万円以上の収入となる。定員割れせず、毎年この収入を確保できるのは「甲子園出場のおかげ」だという高校も少なくないのである。
そうした恩恵を誰よりも受けているのが、夏の大会を主催する高野連(日本高校野球連盟)と朝日新聞である。
昨夏開催された第97回大会の収支決算をみると、入場料収入は約4億4900万円。支出は約3億3900万円で、差し引き約1億1000万円の剰余金が出ている。これを高野連を中心とする委員会で運用する。
この剰余金は全国高校軟式野球選手権大会関係費に500万円、少年野球振興補助金として100万円など、様々な補助金に充てるとされている。高野連関係者は「公益目的以外で使うことができないようにするため基金を設けているが、13億円以上の資産を保有する超優良組織といえる」と明かす。高野連とともに夏の大会を主催する朝日新聞は、拡販ツールとして甲子園を利用する。
地方大会が始まると、地方版の紙面に各高校のメンバー表を掲載するなど、独占的に情報を扱える。試合経過も詳しく報じられるため、高校野球ファンの購買部数が大幅に増えるという。孫が甲子園に出るので購読を始める年配者も少なくなく、地域によっては2割増しになる販売店もあるという。
間もなくプレイボールを迎える夏の甲子園。大金を、いや優勝旗を故郷に持ち返るのはどこの代表校になるのだろうか。
※週刊ポスト2016年8月12日号