昆虫食は「美味しくて栄養価が高く、地球環境に優しい」といわれ、理想の未来食とたとえる人もいる。ただし見た目のグロさをのぞげば。そんな昆虫食の料理を集めた「昆虫食フェア」を都内のレストランで開催し、人気を集めているという。いったいどのようなものか、さっそく試食してみた。(取材・文=フリーライター・神田憲行)
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レストランは東京・高田馬場にある「米とサーカス」という。もともと鹿肉やワニ肉などを提供するジビエ居酒屋として、食の好奇心豊かな客の胃袋にアピールしてきたお店だ。それがなぜ昆虫食なのか、フェア責任者の宮下慧さんが説明する。
「これまで当店ではダチョウやウーパールーパーなどいろんな食材に手を広げてきたところ、お客さんの間から『虫も食べてみたい』というご要望が寄せられることが多くなってきたんです。それで去年2月に期間限定でやってみたところ、非常に好評でして、その第二弾として今回開催することにしました」
珍しい昆虫食が食べられるとあって、遠方からわざわざ1人でやってきて「こういうの食べたかったんだよねー」と舌鼓をうつお客さんもいるとか。世の中、広いものである。
「現代の日本では昆虫はそんなに馴染みのない食材ですけれど、世界では20億人が普通に食べているポピュラーな存在なんです。食材もたとえば『アリの水煮缶詰』は、都内のアジアンスーパーで普通に手に入りますよ」
メニューは昆虫料理研究家の内山昭一氏、虫食いライターのムシモアゼルギリコ氏の協力を仰いで完成した。さっそく食べてみよう。
まずは初心者にとってもっともハードルが低いと思われる「アリの卵ゼリー」から。赤いゼリーの見た目が美しく、「アリの卵」と聞かなければ普通に美味しい。脳内に「美味しい!でもアリの卵!でも美味しい!」という想いがリフレインする。
「ただ昆虫を食べさせる、というだけではレストランの意味がありません。昆虫で、しかも美味しいというのがポイントなんです」(宮下さん)
お次はフェアの目玉料理、虫寿司である。使われている食材は、ミツバチ、カマキリの子ども、イナゴ、コオロギ、蜂の子、タガメだ。それぞれが原型を留めたまま、お寿司の上に鎮座している。
「虫寿司で悩んだところは、それぞれの昆虫がみんな茶色で見た目が楽しくないところですね。それで紅ショウガを添えたりしそで巻いたりして、彩りを加えました。ギリギリ和食の伝統にそって昆虫食をアレンジした、という感じですかね」
宮下さんのトークに熱が籠もるが、卵焼きの上に乗ったタガメの存在が強烈過ぎて頭に入ってこない。これ、5センチくらいあるよな……。
「あ、タガメ気になっちゃいます?これ国内では希少なので、タイから塩煮したものをわざわざ取り寄せているんですよ」