9月1日は、1年の中で少年少女の自殺がもっとも多い日である。夏休みが終わり、新学期が始まるその日に自ら命を絶つのは、彼ら彼女らを絶望の淵に立たせる深い闇が関係している。精神的・肉体的虐待、性暴力、そして貧困や学校でのイジメなどさまざまな要素が複雑に絡み合い、10代20代の若年女子たちの心を蝕んでいるのだ。それがときに自殺などの自傷行為に走らせたり、カラダを売ることによって承認欲求を満たし、生活の糧にせざるを得ない状況がある。そんな女子たちを救おうと、これまで3000人以上の女子に寄り添って話を聞いてきたNPO法人『BONDプロジェクト』代表の橘ジュン氏が、このほど『最下層女子校生~無関心社会の罪~』(小学館新書)を上梓した。橘氏に若い女性たちが抱える「闇」について聞いた。
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──今の少女たちを取り巻く環境はそんなに厳しいものなのですか。
「相談したくても相談できない子が増えています。そういう子は、既存の制度からもこぼれ落ちてしまい、社会の統計からも消されて“透明”のような存在として、家族や学校、社会からもなかったことにされていくのです。DVなどの家庭的な事情、それに伴う精神疾患や体調不良、性被害を受けたことによる自尊心の欠如、親が貧困のため経済的に困窮状態にあるなどで、居場所を失い、孤立感に苛まれ、“生きづらさ”を抱えています」
──昔はレディス(女暴走族)などエネルギーを外で発散していたと記憶しています。
「当時から、私はそういう子たちをずっと取材し続けてきましたが、その当時の彼女らと現代に生きる女の子たちはかなり違うように感じます。仰るように当時の彼女たちは怒りや不条理なことがあると、それを外に向けて発散していました。しかし、現代に生きる女の子たちはほとんどが内向きです。常に受け身で自己肯定感が少なく、“自分なんて生まれてこなければ良かった” “自分なんてどうなってもいい”と自信を失っています。それが自傷行為やカラダを売ることで“自分は他人に必要とされている”と自分を納得させています」
──昔は援助交際というと、欲しいものを買うためにやっているというイメージがありました。
「もちろん、そういう子もいます。でも、私が話を聞いた子で多いのは、お金ももらわずに、自分が必要とされるならと、唯一そこだけが自分を肯定してもらえる場所だっていって知らない男に抱かれるんですよ。お金をもらうにしたって、せいぜい2万円です。しかも、ホテル代込みです。それどころか5000円や3000円でカラダを許しちゃう。私に言わせれば、自己肯定感が低い子が肯定されるために援助交際するのって立派な自傷行為だと思います」
──何か、信じられないような話ですね。
「一見、何も問題のないような子でも心に深い傷を負い、“死にたい”と口にする子もいます。医者の娘さんで貧困とは無縁。子どもの頃から、“医者になれ”とスパルタ教育を受けていました。とても優秀な有名私立大学附属中学に合格したんですが、父親が望んでいた第1志望の学校だけ落ちてしまった。そうしたら、親からは”バカ”呼ばわりされて、存在を無視されています。もっぱら親の愛は出来のいい弟の方に偏重して、彼女は家の中に居場所を失っています。それが“死にたい”という言葉を吐かせるんです。だけど、親も学校の先生も彼女の悩みを理解できないんですね」