エースの前田健太が大リーグのロサンゼルス・ドジャースに移籍し、広島カープは昨シーズンより戦力が劣るはず。誰もがそう思った2016年、カープの成績は絶好調だ。安仁屋宗八、達川光男、北別府学の25年前の優勝(1991年)を知る広島OB3人が、今年の快進撃について語り合った。安仁屋氏は前回優勝当時は投手コーチで達川氏と北別府氏はバッテリーを組んでいた。
──今年の開幕前の順位予想では、お三方とも「広島1位」。これはOBだからでしょうか。それとも本当に快進撃を予想していた?
安仁屋:ご存じの通り、ボクはこの25年間「広島1位」の予想で通してます(笑い)。だからあまり説得力はないかもしれないが、今年こそは本物だと思っていた。
──本当に?
安仁屋:本当に(笑い)! 今年はマエケン(前田健太=昨年15勝、現ドジャース)が抜けたでしょう。それがチームにはプラスに働くと考えていた。マエケンの穴によってチームが一丸となったら、そういうチームは強いですよ。
北別府:ボクもマエケンの15勝を誰が埋めるかということをまず考えましたが、去年のドラフト1、2位で獲得した岡田明丈と横山弘樹ら、穴を埋めるだけの戦力はあると思った。だから、優勝予想には確信がありましたよ。
達川:去年までは田中(広輔)が6、7番を打っていたが、1番を打たせることで菊池(涼介)と丸(佳浩)とくっついて機動力が上がった。これで優勝するなと思いましたよ。黒田(博樹)とジョンソンで貯金10あれば、あとは5割でいいんですから。
安仁屋:新しい力も出てきた。野村祐輔が12勝、岡田もいい。岡田が伸びたのはね、実は二軍の佐々岡コーチのお陰よ。緩いカーブを教えてストライクが取れるようになった。緩いカーブは腕を振らないと投げられないし、相手に的を絞らせないことで、ピッチングの幅が広がったんだね。
●あにや・そうはち/1944年、沖縄県生まれ。1964年に広島入団。広島に在籍した13年間で90勝をあげている。巨人戦に強く(通算34勝)、「巨人キラー」と呼ばれる。引退後は広島の一軍・二軍投手コーチ、二軍監督を歴任し、今年は春季キャンプで臨時投手コーチを務めた。
●たつかわ・みつお/1955年、広島県生まれ。1978年に広島入団。広島黄金時代の正捕手として活躍した。野村克也氏らが得意とした「ささやき戦術(打者にささやきかけ、集中力をそぐ戦術)」の使い手として有名。引退後は広島二軍監督を経て一軍監督を2年務めた。
●きたべっぷ・まなぶ/1957年、鹿児島県生まれ。1976年に広島入団。優れた制球力を武器に広島で213勝をあげる。最多勝2回、最優秀防御率1回のタイトルに輝き、沢村賞を2回受賞。コントロールのよさから「精密機械」と呼ばれた。引退後は広島の一軍投手コーチを務めた。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号