参議院選挙での与党勝利で改憲勢力が3分の2の議席を確保したことを受けて、にわかに改憲論議が高まっている。最新刊『君は憲法第8章を読んだか』が話題の大前研一氏が、従来の改憲論に「NO」をつきつける。
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イギリスが2003年にイラク戦争に参戦した経緯などを検証していた独立調査委員会(チルコット委員長)は7月、7年間にわたる調査の結果、トニー・ブレア元首相の参戦判断や計画策定に数々の誤りがあったとする報告書を発表した。さらに報告書は、ブレア元首相が開戦8か月前の2002年7月、アメリカのブッシュ大統領(当時)に「何があっても協力する」と武力行使での連携を書簡で確認したことも明らかにした。
要するに、ブレア元首相の決定的なミステークは“アメリカのポチ”になったことだったのである。
これは安倍首相への警告と言えるだろう。集団的自衛権の行使を容認し、他国軍の後方支援のために自衛隊をいつでも海外に派遣できるようにする安全保障関連法は、まさに「アメリカについていきます」という宣言であり、それがいかに危険なことか、前述の報告書が如実に物語っているからだ。
常にアメリカが日本よりも正確な情報を持ち、正しい判断をしているのなら、アメリカに追従するのは仕方がないし、東西冷戦時代であれば西側陣営の一員としての義務もあったと思う。
しかし、前述の報告書を待つまでもなく、アメリカがこの20年間にイラクやアフガニスタンなどで展開してきた中東政策は、ことごとく間違っていた。それ以前の歴史を振り返ってみても、ベトナム戦争という大きな過ちを犯したし、中南米でもパナマ侵攻などのミステークを重ねて反米勢力を増やしてしまっている。
そういう判断力なきアメリカと盲目的な軍事同盟を結ぼうというのが、昨年9月に成立して今年3月に施行された安保関連法である。
そして今、俎上に載せられようとしている自民党の憲法改正草案は、戦争放棄を謳った第9条を次のように変えようとしている。