8月3日の内閣改造・自民党役員人事で長老政治家・二階俊博氏が幹事長に起用されたが、その背景には安倍晋三・首相の総裁任期の延長があるとされる。
自民党の党則では「2期6年」が最長と定められているが、2020年の東京五輪を安倍首相で迎えるために「総裁任期延長論」が出ているのだ。それを通すべく、自民党各派に顔の利く二階氏を重職に起用したという論である。だが、その一方で、別の狙いもささやかれている。いまや安倍首相を脅かす力をつけてきた菅義偉・官房長官への牽制だ。ベテラン政治部記者はこう読み取っている。
「今回の改造で菅さんが推していた大臣候補が1人も入閣しなかったことに驚いた。安倍総理は明らかに“菅離れ”を始めている」
本誌前号では、幹事長人事をめぐって官邸は入院中の谷垣禎一氏の留任を求めたことを報じた。その背景には、ベッドから動けない谷垣氏を留任させることで菅氏が党務もコントロールしようとする思惑がある。
だが、安倍首相は谷垣氏が留任を固辞するとすかさず二階氏を後任に据えた。キャリアでも党内への影響力でも菅氏を上回る二階氏に党務を任せることで、「菅氏の党務への口出しを防いだ」(同前)のである。
注目すべきは幹事長代行に安倍首相と家族ぐるみの付き合いで「筆頭お友だち」の下村博文・元文科相が抜擢されたことだ。安倍側近はこう見る。
「もともと総理は気心知れた下村さんをいずれ官房長官に据えたいと考えていたが、文科相時代に不祥事で失脚してしまった(※注)。その下村さんを復権させたのは、二階さんの下で任期延長の根回しをさせ、次の内閣改造で官房長官への起用をにらんだ人事だ」
【※注/下村氏は文科相時代、無届けの政治団体で献金を受け取った疑惑など政治資金問題が相次ぐなか、新国立競技場の旧計画が白紙撤回となり、2015年10月の内閣改造を機に大臣を退任した】
任期延長に備えて、これまでの安倍―菅ラインから、安倍―下村ラインへのコンビの組み替えを視野に入れているというのである。
“包囲網”を敷かれた菅氏の対抗手段として取り沙汰されるのは、「影の総理」が「表の総理」になる──つまりポスト安倍に名乗りを上げるということだ。そうなればなおのこと、安倍首相との対立は避けられない。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号