8月3日の内閣改造ではポスト安倍の「次の総理・総裁レース」に変化が起きた。有力候補の2人、石破茂・前地方創生相と岸田文雄・外相は内閣改造で安倍首相の任期延長に賛成するか否かの“踏み絵”を迫られたのだ。
留任すれば、東京五輪を首相として迎えたい意向もあるとされる安倍晋三首相の自民党総裁任期延長に公然と反対できなくなる。だが、反対なら大臣を辞めなければならない。
石破氏は留任を拒否して首相と戦う姿勢を示し、「外相はもういい」と漏らして幹事長を狙っていた岸田氏は、無理だとわかると一転外相にとどまった。「岸田さんは任期延長を容認することで将来の政権禅譲を期待する道を選んだ」(岸田派議員)とみられている。
だが、踏み絵を踏もうが踏むまいが、先行きは暗くなった。
安倍首相は2人の対抗馬として秘蔵っ子の稲田朋美氏を防衛相に起用した。本来なら副大臣クラスの当選4回生だが、この間に規制改革相、自民党政調会長、防衛相と飛び級で総裁候補に急浮上させたのだ。自民党内には「総理は東京五輪まで任期延長した後、稲田に政権を禅譲するつもりではないか」という見方が広がっている。
もっとも、永田町には「防衛相経験者は総理になれない」というジンクスがある。過去、防衛庁長官と防衛大臣の経験者は金丸信、加藤紘一、山崎拓氏などの大物を含めて70人いるが、首相まで登り詰めたのは中曽根康弘氏だけである(ちなみに石破氏も防衛相経験者)。細田派ベテランが語る。
「長期政権の要諦はナンバーツーを潰すこと。総理は稲田を後継者にするように見せて、石破や岸田、さらに言えばポスト安倍の座を狙い始めた菅(義偉・官房長官)を牽制する当て馬に利用しているだけだ。短期間で出世すればそれだけ党内の嫉妬を買う。稲田は自分より当選回数が多い70人の入閣待望組議員全員に恨まれた。女性で初めて防衛相を務めて総裁選にも出馬した小池百合子が結局、総裁にはなれなかったのと同じ道を辿っている」
※週刊ポスト2016年8月19・26日号