サラリーマンの老後資金の虎の子ともいえる「退職金」。かつては年功賃金・終身雇用を前提に整備されていたが、それが今、激変の最中にある。
それはつまり、“賃金の後払い”という位置づけの退職金が、「同じ会社でも、人によって大きく違う時代」になったことを意味する。それゆえ多くの有名企業はその額を〈非公表〉とするが、本誌は企業OBへの取材を重ね、その水準に迫った。
数年前にソニーを退職した技術畑の元部長(60代前半)が退職時を振り返る。
「勤続35年で、退職金は2700万円でした。基本給の一定割合が退職金のために毎月積み立てられ、予定された運用利息分がそれに乗っていく仕組みでした。退職する時には、一時金として全額受け取るか、そのうち一部を企業年金に回すかを選択できます。
年金方式を選べば、支給されている間も原資を運用してもらえますが、利率は運用実績によって更新されていく。私の場合は、郊外に建てたマイホームのローンの繰り上げ返済に大半を回した」
一口に「退職金」といってもその仕組みは様々だ。社会保険労務士の蒲島竜也氏が説明する。
「退職金を一時金として受け取るか、年金としてもらうか。年金でも、受け取れる額が一定の確定給付型か、運用原資が一定の確定拠出型か。様々なメニューを用意する企業が増え、どんなもらい方が有利か、判断が難しくなっています」
同じ会社でも様々な条件で額は変わる。前出・元ソニーの男性はこう続ける。
「同期でも役職などによって基本給が違うから、退職金にも差が出てきます。また、会社のリストラに応じれば加算金ももらえた。業績低迷で会社は早期退職希望を何度かにわたって募りましたが、初回の割増条件が最もよかった。退職金が7000万円を超えた人がいたという話も耳にした」
※週刊ポスト2016年8月19・26日号