サラリーマンの老後資金の虎の子ともいえる「退職金」。かつては年功賃金・終身雇用を前提に整備されていたが、それが今、激変の最中にある。それはつまり、“賃金の後払い”という位置づけの退職金が、「同じ会社でも、人によって大きく違う時代」になったことを意味する。
有価証券報告書に記載がある「平均年収」や毎期の労使交渉で妥結額の出る「ボーナス」と比べて、「退職金」について公開される情報は圧倒的に少ない。“もらった人に聞く”という方法以外に、額を知るアプローチがないのが実情だ。
経団連などが2年に1度公表する「退職金・年金に関する実態調査結果」(2014年、回答257社)は大企業が対象で、平均額は総合職の大卒(勤続38年)で2357万円、高卒(勤続42年)で2154万円。
本誌は、厚労省「賃金事情等総合調査」(2015年)をもとに大企業の退職金の業界ランキング(大卒)を作成した。
1位は「海運・倉庫」で3899万円、2位が「保険(3315万円)」、3位「窯業・土石製品(2936万円)」、4位「化学(2799万円)」、5位「私鉄・バス(2735万円)」と続く。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
「いわゆる年功序列賃金を重視した伝統的産業の大手企業がランキングの上位にあがっています。年功重視の保険、総合商社、メガバンク、そしてテレビ局などメディアは退職金の額が大きくなる傾向にあります」
※週刊ポスト2016年8月19・26日号