中国では今年上半期(1~6月)、労働者のストライキ発生件数が前年同期比約20%も増加していたことが分かった。
特に、タクシー関係企業の労働者によるストが激増しているが、これはインターネットによる配車システムの普及によって、仕事を奪われたタクシー運転手によるストライキが大きな要因となっている。
香港に本部を置く非政府組織「中国労工通信」が明らかにした。それによると、中国の今年上半期のストライキ件数は1454件で、1日平均では8件となる。この原因のほとんどが給料の支払い遅延や倒産による給料未払い、さらに社会保険の未整備など労働環境の問題だ。
このうちタクシー業界を中心としたうち交通システム関連が前年の127件から約1.6倍の204件とほぼ倍増しており、スト全体の約14%を占めている。
中国では近年、タクシー運転手の待遇の悪化が大きな社会問題になっている。昨年1月だけで、タクシー運転手による数千人規模の抗議行動が相次ぎ、江蘇省南京市など少なくとも7都市でストライキやデモが発生している。
遼寧省瀋陽市では、乗客から徴収していた1元(約17円)の燃料費の取り消し措置に抗議して、数千人規模のデモが起きている。
また、運転手は所属するタクシー会社に月額5000元(約9万6000円)前後を車の使用料金として支払う契約が一般的だ。このほか、ガソリン代や整備費用なども負担しなければならない。
さらに、インターネットを利用したウーバーやDidi Chuxing(滴滴出行)など配車アプリの登場によって、運転手の賃金は実質的に減っているという。
米ニューヨーク・タイムズ紙は「中国におけるタクシー業界のストライキは珍しいものではない。しかし、全国各地に同様の事件が拡大していくことで、ソーシャルメディアの組織力が浮き彫りにされれば、労働紛争を基本的に容認できない中国共産党指導部に新たな挑戦状突き付けることになる」と報じ、ネットの普及による新たな社会問題の出現を予測している。