京都在住の著者が、皮肉たっぷりに京都人の気質を綴った『京都ぎらい』(朝日新書)が23万部のベストセラーになったが、実はもう一か所、“嫌われている”都市があった──名古屋だ。東京、大阪に続く「第3の都市」である名古屋は、なぜ全国から目の敵にされてしまうのか。過去にはタモリが名古屋について「名古屋弁はみゃーみゃーと響きが汚い」などと揶揄したことから、否定的なニュアンスで語られることも多くなった。
実態を探るべく、本誌記者は名古屋へ飛んだ。タクシーで中心部の100メートル道路を通ると、ウインカーも出さずに多くの車が車線変更し、大音量のクラクションがひっきりなしに鳴り響くのに驚いた。
大須商店街にある洋服店では、中年女性が当たり前に「まけてちょ」と値切る。出店では「名古屋名物」と銘打って「天むす」が売られていたが、実は天むす発祥の地は三重県だ。他にも同じく三重県のトンテキや岐阜の鶏ちゃんなど、名古屋めしには“パクリ疑惑”が少なくない。
繁華街・栄のスナックの店頭には「開店3周年」を祝う花が並んでいたが、通りすがりの男性が10本以上引き抜いて持ち去った。聞けば、名古屋では“常識”だという。記者の滞在は1日だけだったが、それでも“名古屋らしさ”を感じることができた。名古屋出身のお天気キャスター・森田正光氏が指摘する。
「名古屋人は見栄っ張りで結婚式や葬式を派手にしたがる。引き出物は“重い・かさばる・豪華”を最上とします。その一方、根はケチで何でも値切るし、安くても高そうに見えるモノを好む」
また、森田氏は名古屋人が嫌われる一因は、その「けなし癖」にもあるという。
「名古屋人は何でも“いかん”と否定から入り、けなしてしまう。例えば、喫茶店でも、“昨日の店のほうがパンが分厚い”と文句を言うから嫌がられる。この天邪鬼は名古屋人に深く根づいていて、僕の天気予報も、“気象庁は晴れると言っていますが、雨が降るかもしれません”と名古屋流。予報においてはこれが意外とウケたんです(苦笑)。
この“名古屋気質”は何年経っても変わらない。いまもお天気キャスターを指導するとまず批判から入ってしまうため、煙たがられています」
名古屋人は他の色に染まらない。それもまた、嫌われる要素なのかもしれない。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号