老後の生活にとって重要な「虎の子」となる退職金。アノ有名企業の退職金事情はどうなっているのか──。
ソフトバンクでは、退職金はすべて「確定拠出型年金」に一本化。勤続年数などは関係なく、年金資金を社員の裁量で運用する。同社広報室は、「在職が長ければ受け取る額が増える仕組みにはしていない。そのほうが人材の流動性も高まる」と率直に説明する。
社員個人の才覚が重視される時代といえば聞こえはよいが、人事評価も退職金額に直結するシビアな時代だ。メガバンク人事担当者が語る。
「社員一人ひとりが毎年、退職金額算定のために実力評価され、積立額が決まります。在籍年次による最低限の功労部分はあるにせよ、同じ年次でも積立額に大きな格差が生じる。その額は毎年本人にも通知される」
そうした通知のある有名企業は他にも散見され、60代半ばの日産自動車OB(生産部門の元管理職)は「毎年春の時期の給与明細書に退職金の見込み額が通知される。当時で2500万円を超えることがわかったので、57歳で退職を決めました」と証言する。
ちなみにメガバンクでは、同期入社組のうち50歳を過ぎた頃に役員に昇進する見込みのない大半は子会社などへの出向が打診される。
出向の段階では給与などは変わらないが、数年後には転籍となり、その時点で早期割増の退職金が支払われる。「50代半ばを前に実質的な定年退職となる」(前出・メガバンク人事担当者)のである。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号