昨今話題の書『京都ぎらい』(朝日新書)より潜在数は多い(!?)とも言われる「名古屋ぎらい」な人々。“見栄っ張り”と言われる名古屋人には、実は大きなトラウマがある。それが「名古屋飛ばし」である。
発端は1987年に遡る。マドンナとマイケル・ジャクソンという大スターの初来日コンサートが横浜や大阪、福岡で公演されたが、なぜか名古屋が飛ばされてしまったのだ。この屈辱に多くの名古屋人が震えたが、最大の“事件”はその4年後に起きた。
1991年11月、運転開始を翌年に控えた東海道新幹線「のぞみ」の下り1番列車が、名古屋駅を「通過する」と報じられたのだ。この“悲報”に地元は大騒動となった。『名古屋あるある』の共著者で名古屋出身の川合登志和氏が振り返る。
「この時の名古屋人の怒りようは凄まじかった。名古屋を通過するという発想自体がありえない話で、地元では“社会問題化”しました」
名古屋を通過する新幹線は早朝のたった1本のみだったが、地元政財界は猛反発。しかし、ダイヤは変更されず1992年3月14日に名古屋人は“屈辱の朝”を迎えた。
「この日、地元テレビ局は通過の瞬間を生放送し、局アナが『これは名古屋に対する冒涜でありましょうか!』とまるで“事件報道”のように実況した」(川合氏)
そんな名古屋人が期待に胸膨らませるのが2027年に東京~名古屋間で開業予定のリニアモーターカーである。もしここで、忌まわしき「名古屋飛ばし」が起きたらどうなるだろうか? 川合氏は続ける。
「流石にないでしょうが、万が一また飛ばされるようなことがあれば、かつてない大暴動が起きるはずです(笑い)」
※週刊ポスト2016年8月19・26日号