サラリーマンの老後の生活を支える「退職金」。かつては年功賃金・終身雇用を前提に整備されていたが、それが今、激変の最中にある。年功よりも実質的な会社への貢献度を評価する「ポイント制」の導入や、確定拠出型年金への一本化などにより、人事評価も退職金額に直結するシビアな時代となった。
その一方、経営難の企業で退職金が高くなることもある。東芝・シャープの2社について人事ジャーナリストの溝上憲文氏はこういう。
「東芝が昨年末に発表した再建計画で用意された早期退職制度(募集は3月末まで)では50歳の割増加算が基本給の40か月分と報じられました。同業の基本給などから推定すると、約3500万円(約2000万円が上乗せ)と試算できます。
台湾の鴻海に買収されたシャープの場合も同じく50歳で26か月分割増されたので3200万円(約1300万円が上乗せ分)前後だったと推計できる」
経営難の企業で高額と聞くと違和感があるが、会社は給与の他に社会保険料などを負担するので「雇い続けるコスト」を考えれば、一時的に高いカネを払っても人を減らす判断になる。
他に本誌の取材に有名企業OBらが明かした退職金額は、「電通・部長クラス(58歳早期退職)4100万円」「全日空・パイロット経験者3800万円」「三井物産・部長クラス3000万円以上+企業年金」「リクルート(40歳で起業)1800万円」といった数字が並ぶ。
また三菱自動車は「勤続年数に課長・部長などの職位と職務評価が累積加算される。同じ課長でも昇進スピードによって額には個人差が出る。モデルケースとしては、大卒で、40代で課長になり、そのまま勤め上げて60歳で退職した場合、約2800万円です」(広報部)と説明した。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号