人生の「終の棲家」となる老人ホーム選びでは、誤った選択はしたくないし、納得したうえで決めたい。有料老人ホームを表彰する『リビング・オブ・ザイヤー2016』はその重要な指標となり得る。最近の老人ホーム施設内の食事は、もはや外食に行く必要がないほどクオリティの高いものになっていることもあるという。高齢者住宅経営者連絡協議会(高経協)事務局長で「タムラプランニング&オペレーティング」代表の田村明孝氏が言う。
「毎日食べるものですが、家庭で出されるものばかりだと飽きる。外出できない人もいるので、外食気分を味わえる豪華な食事をウリにする高齢者住宅も増えています」
〈食事サービス〉部門で一次選考を通過した「クラーチ・ファミリア古淵」(神奈川・相模原市)では、朝昼夕の3食で、和食か洋食かを選べる。季節や産地にこだわった食材を、経験豊富なシェフが料理する。60代の女性入居者はこう言う。
「土用の丑の日には国産うなぎが出ました。料理だけでなく、器が有田焼で、食堂のテーブルはガラス張りのオシャレな物だったりと、食事が楽しくなる演出も嬉しい。
食後はカフェが、入居者たちの憩いの場になります。世界でも数台しかないエスプレッソマシーンがあって、クロワッサンも焼いてくれる。バーもあって、そこでは昼夜問わずお酒が飲めます」
週末になると、祖父母に会いに来た孫たちが、クロワッサンを喜んで食べているのだという。とりわけ月に一度のスペシャルディナーイベントが、入居者から喜ばれているという。
7月は、「フレンチと和の共演」だった。フレンチ出身のシェフと、割烹料理の板前が協力して、夏の食材を使ったフルコースを提供。このイベントは、入居者の家族も1000円という格安料金で参加できる。
それでありながら月額の食費は4万2000円とそれほど高くはない。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号