故きを温ねて新しきを知る。内閣改造や新都知事、そして天皇の生前退位といった最新ニュースの深層は、戦後政治史の経験と蓄積がなければ読み解けない。いまこそ本誌恒例「老人党」の叡智の出番だ。現在の政治問題の根本はすべて、彼らの時代に遡るのだから。村上正邦氏(84)、筆坂秀世氏(68)、平野貞夫氏(80)の3氏が存分に語り合った。
村上:今回の内閣改造・党役員人事で、二階(俊博)さんが幹事長になったでしょう。私はさっそく彼に「貧乏くじを引いたな」と言ってやったんです(笑い)。次の衆院選は苦戦必至で、敗戦の責任を負わされるからね。
筆坂:それはそうですね。7月の参院選は民進党の負けといわれているが、3年前に民進党(民主党時代)は一人区で2勝しかできなかったのに、11勝した。安倍さんは脅威を感じて東北入りしたけど、東北ではほとんど民進党が勝った。
平野:そう、安倍さんが応援したところばかり負けた。衆院選は基本的に一人区なので、今回の結果がスライドする。与党はものすごく深刻な問題を抱えたんですよ。
村上:「だから総理は幹事長をお前に頼んだんだよ」って二階さんに言ったんだ。
筆坂:二階さんは何と?
村上:「承知している」って言ってたよ。あの人は今様の木下藤吉郎(豊臣秀吉)なんだよ。信長に命じられたら、何でも引き受ける。「総理の延命策に利用されるよ」と忠告しても、「それで結構だ」と腹を決めている。
それでも私は、二階さんはいずれ天下を取ると思ってるけどね。おそらく次の総選挙で野党が共闘の布陣を敷いたときに、二階さんがそれを乗り越える布陣をどうつくっていくかが見ものだと思っている。関白太閤の秀吉は草履取りは草履取り、足軽は足軽、分に応じて「あるべきようを、あるべきように」生きて天下人になった人です。
平野:二階さんにも勝ち目はありますよ。まず民進党議員の3分の1は一人区での戦い方を理解していない。共産党も民進党との選挙協力の副作用が出ていて、自衛隊や九条の問題で硬直して、さらなる協力は難しくなっている。
筆坂:共産党議員が防衛費を“人殺し予算”なんて言ったでしょう。こういうのが民共連携の大きなネックになりますよ。いずれ共産党は「自衛隊は合憲です」と言わなきゃならなくなると私は思う。