長く「お受験」界に君臨してきた「慶應幼稚舎」。近年、同じ慶應系列に新しい小学校が開校したことで、慶應ブランド内でのつばぜり合いが勃発している。小学校受験、幼稚園受験に精通する石井至氏が解説する。
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慶應幼稚舎は「日本一古い私立小学校」と言われる超名門。同校の学校説明会で、舎長(校長)が「幼稚舎に受かると、『我が世の春』と勘違いする親御さんもいれば、(落ちて)悲嘆にくれて絶望する親御さんもいる。たかだか小学校の入試に落ちたくらいで人生は決まりません」と言ったのを聞き、驚いたことがある。そんな当たり前のことをあえて言わねばならないほど、「慶應ブランド」、中でも幼稚舎信仰が厚いことの証しだろう。
そんな中、幼稚舎に続く系列小学校として横浜初等部が開校した(2013年4月)。小学校から慶應を目指す人には選択肢が増えたように思えるが、開校前の評判はそうでもなかった。
「小中高一貫教育」を掲げる横浜初等部からは、湘南藤沢中等部・高等部(1992年開校。以下SFC)にしか進学できない。対する幼稚舎からはすべての系列中学(SFCを含む)に進学できる。そのため保護者からは「魅力を感じない。受験する人なんかいるのか」という反応が大勢だったのだ。
実際、大学進学後も「SFC出身は亜流、傍流」という声が学生間にあり、反対に幼稚舎組は「自分たちこそが本流」という、ある種の「選民意識」を持っている(中学や高校から慶應入りした同じエスカレーター組の中でも、日吉や三田以外の系列校は「慶應ではない」と言われることがある)。
「慶應本流」からはそう見下されるSFC組だが、負けっ放しというわけではない。幼稚舎組に対し「勉強もろくにしてこなかった連中と一緒にされたくない」という、劣等感の裏返しのような思いを持つ人もいる。