7月31日に膵臓がんで死去した先代・九重親方(元横綱・千代の富士)の後援会関係者は、その葬儀で「やはり親方と相撲協会との緊張関係は深刻なものだったのだ」と改めて感じさせられたと語る。
東京・墨田区の九重部屋で行なわれた通夜(8月6日)には2000人、告別式(翌7日)にも1000人が参列した。
「相撲協会からは八角理事長(元横綱・北勝海)のほか、二所ノ関親方(元大関・若嶋津)ら協会理事や関係者も参列したのですが、座る席が設けられたのは八角理事長だけ。他の理事たちは立ったままでした。
弔辞も理事長ではなく後援会の副会長が読んだ。土俵のある稽古場に祭壇が設けられ、周囲に数えきれないほどの献花が並んでいたが、そこも部屋の後援会関係者や友人の名前ばかり。聞けば、夫人が協会関係者からの献花はすべて断わったそうです。唯一、飾られていた相撲協会名での献花も一度は断わったと聞きます」(同前)
昭和の大横綱の葬儀でみられた異様な光景。背景には、先代・九重親方が協会に冷や飯を食わされてきたという事情がある。
「2014年の理事選で落選した後には、協会の主流派から異例の“ヒラ委員への三階級降格”という仕打ちを受けた。ご遺族には相当な無念があったのでしょう」(同前)
高砂一門の親方の一人は九重部屋を継いだ元・千代大海が、そうした先代の無念を晴らすべく動き出すとみる。
「もともと『九重部屋』には複雑な人間関係がある。先々代の九重親方(元横綱・北の富士)と先代の間では、部屋の土地・建物の継承などを巡る諍いがあり、結局、先々代は八角親方に土地・建物を譲り、八角部屋を立ち上げさせた。以来、『先々代&八角vs先代』という対立構図が続いてきた。
千代大海はそうした構図の中で先代が苦汁をなめさせられたことをよくわかっている。今後は八角親方と理事長の座を争った貴乃花親方のグループに入り、反八角派として協会理事の席を目指していくようです」
ウルフの無念を愛弟子が晴らすか。
※週刊ポスト2016年9月2日号