安倍政権が「安保法制」を押し進めた昨年以降、政権の一翼を担う公明党の存在がクローズアップされている。同党が支持母体とする創価学会は、平和主義をかかげる。とりわけ、創価学会の「婦人部」は、改憲への忌避感が強いとされる。季刊「宗教問題」編集長の小川寛大氏が解説する。
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創価学会とは強固な“男性型組織”である。歴代の会長は全員男性。最高幹部職である副会長(300人近くいる)の中にも女性はいない。
しかし創価学会の婦人部は、しばしばメディアなどから「創価学会の最強軍団」などと称されるほどの存在感を見せる。いったいなぜか。婦人部が、学会の日々の活動の柱石たる存在だというのは事実である。新会員の多くが2世、3世信者となり、“外からの新会員”が相対的に少なくなった現在でも、婦人部メンバーたちはママ友仲間を学会の活動に誘うなど、組織の底辺拡大のため尽力している。
選挙時のフレンド票(創価学会員以外から集める公明党票)獲得作戦も、彼女たちは熱心に電話や訪問を行う。ある創価学会関係者はこう分析してみせる。
「創価学会の男性会員の場合、日頃の活動は厳密な評価の対象です。『こいつはできる』ということになれば、幹部コースへの道も開けます。しかし女性たちにそういう可能性はあまりない。ただ、それゆえに、婦人部には“打算なく目の前の活動に打ち込む”という純粋な信仰が培われた」
その婦人部は、必ずしも“本部の意のままに動くロボット”ではない。かつて、ある自民党国会議員の下半身スキャンダルが世間を騒がせた時のこと。ある創価学会の幹部は、苦りきった表情で言った。
「婦人部は、こういう話を一番嫌う。選挙のときこういう状況を前にして、『自民党と協力しましょう』なんて言えませんよ」
彼の表情に浮かぶ憂慮は、創価学会・公明党中央が、婦人部との関係に日ごろ、いかに心を砕いているのかを示していた。創価学会の池田大作名誉会長が、高齢などの問題から公の場に姿を現さなくなって久しい。しかし“池田思想”の根幹とは世界平和の希求であり、池田氏は憲法9条を高く評価していた。ところが現在、公明党は改憲派である安倍政権の方針に基本的に同調している。