対峙する打者の印象に強く残るいわゆる「決め球」や「魔球」。ではプロ野球では、誰のどのボールが一番すごかったのか。球界で長く活躍したOBたちに「歴代ナンバーワン」を挙げてもらった。
まず、巨人のV9を名捕手として支え、監督として西武の黄金時代を指揮した森祇晶氏は、V9時代のエース2人の名前を挙げた。
「僕が実際に受けた中では、城之内邦雄(巨人ほか、1962~1974年、通算141勝)のシュートがすごかったね。キャッチャーが手を痛めるくらいの威力があった。それに、ホリ(=堀内恒夫、巨人、1966~1983年、通算203勝)のカーブも素晴らしかった。縦に曲がる、昔でいうドロップ。球速もあった」
他チームでは、当時の下位球団のエース級投手が印象に残っているという。
「広島には“小さな大投手”と呼ばれ、多彩な変化球を操る長谷川良平さん(1950~1963年、通算197勝)がいて、特に変化の鋭いシュートにはバットを何本もへし折られた。あと、カープ史上最速といわれた大石清(1959~1970年、通算134勝)のストレートとスライダーも、球が速くて打てなかった。
監督として使ったピッチャーだと潮崎哲也(西武、1990~2004年、通算82勝55セーブ)のシンカー。一度浮き上がってから急激にストライクゾーンへ落ちる独特な軌道で、日本シリーズで巨人を手こずらせていた」(森氏)
故障によって選手生命の短かった投手もいる。決め球の与える印象は、投手の勝利数などと、必ずしも比例しないのだ。
※週刊ポスト2016年9月2日号