お盆が終わったが、墓参りに“煩わしさ”を感じた人も少なくないだろう。掃除など、都会に住む人にとって、遠く離れた田舎にある墓の「管理」が重荷になっている現実がある。
その問題に、宗教学者の島田裕巳氏が衝撃的な見解を示した。著書『もう親を捨てるしかない』で「親捨て」を提言した島田氏は、墓まで「捨ててしまいなさい」というのだ。
「親捨て発言では、人非人と呼ばれる非難も覚悟した」という島田氏。そんな彼の新たな提言が「墓捨て」である。
「地方を出て都会で暮らす人々にとって、田舎にある先祖代々の墓は負担でしかありません。実家の両親が健在ならまだしも、親が亡くなって周囲に頼れる親戚がいなければ、墓を維持する煩わしさは頂点に達します。墓にはその管理を担う墓守が絶対に必要です。墓守が不在ならば、“墓を捨てる”しかないんです」
「墓捨て」は、自身が提唱した「親捨て」に通ずるという。
「年老いた親の面倒を見る子供が介護殺人に走るケースが後を絶たない。親が重荷になり、家族主義が限界に達した現代社会を生き抜くには、“親を捨てる”覚悟が必要です。親という重荷を下ろして生きることが今の時代には必要であり、先祖や親の墓を“捨てる”ことも、その流れの延長線上にあります」
楽天リサーチが2014年8月に行なった「お墓参りに関する調査」では、40代以上の全ての世代で、7割以上の人が年に一度は墓参りをしたと回答している。
中高年にとって墓参りは生活の一部だが、島田氏は「実は先祖の墓参りという風習は昔からあるわけではない」と主張する。
「そもそもご先祖様と表現するように、先祖崇拝の対象となる方には“ご”や“様”がつきます。崇拝の対象となるのは、家名を引き上げるなど、歴史上で立派な功績を残した人々です。しかし、庶民の家系にそんな方は基本的にいません」