国内

富岡製糸場と富士山周辺 世界遺産登録後はどう変わったか

入場者が激増した富岡製糸場

 世界遺産への登録は、観光地としての輝きや価値を高める効果もある。念願の登録後の富岡製糸場や富士山周辺では、町も人も活気に溢れていた。

 静岡県と山梨県にまたがる富士山は、2013年に文化遺産として登録。人々の畏敬と信仰を集めたことと、芸術作品にも多くの影響を与えたことが世界に認められた。

「富士山は地域が広いため関係者が多く、合意を得るのに苦労しました」と、山梨県世界遺産富士山課の入倉博文さんは語る。

 10年以上の月日をかけ悲願の世界遺産登録が達成されてから、世界中から観光客が訪れるようになった富士山。ただ、人が増えてうれしい反面、環境も損なわれる危 険性がある。そこで自然環境の保全を行うため、山梨県が設置したのが、“富士山レンジャー”だ。メンバーは現在男女7名で構成され、富士山と山麓地域で活動を行っている。

「楽しむこと優先で富士登山のルールを破る方には、納得してもらえるよう冷静に注意しています。体力はもちろん、忍耐力も必要とされる仕事です」と、中島紫穂さん。学校や企業で富士山の自然と環境保全を伝える活動も行っている。

「観光面ばかりが注目されますが、美しい富士山を守り、後世に引き継いでいくために、こういった活動を大切にしていきたいです」(中島さん)

 群馬県にある富岡製糸場と絹産業遺産群。19世紀後半から20世紀末にかけて高品質な生糸を大量生産し、世界規模で絹産業の発展に貢献した近代工場は2014年に登録された。

「入場者数が年間30万人から130万人に激増してかなり驚きました」と富岡市世界遺産部観光おもてなし課の渡辺勉さん。

 富岡製糸場には、施設内を歩きながら歴史の解説を受けられる約40分のガイドツアーがある。退職後、住んでいる地域に貢献したいとの思いから解説員になった桐生勇さんは、71才とは思えないほどパワフルに動き、ガイドを行う。

「解説を聞いてよかったと、感謝の手紙をもらうこともあるんですよ。施設の正しい価値が伝わり、また来よう、友だちにも勧めようと思ってもらえたらうれしいですね」と、ガイドのやりがいを語る。

 夏休み期間中は、富岡東高校の生徒によるボランティアのフランス式繰糸器の実演も。繭から糸口を見つけ出す作業や、糸を繰る際に繭を足す「接緒(せっちょ)」を行うと、観光客からは感嘆の声があがる。当時の工女が行っていた作業を現代の同年代の女性が再現する姿が感慨深い。

※女性セブン2016年9月1日号

関連キーワード

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン