“下肢静脈瘤”とは、脚の血管(静脈)がコブ(瘤)のように膨らみ、ボコボコと浮き出る病気だ。40才以上を対象にした調査では、全体の8.6%(男性3.8%、女性11.3%)に静脈瘤が認められ、患者数は約1000万人以上と推定されている(※)。特に40才以上の女性が発症しやすいため、脚がむくみやすい人は必読!
※:2005年西予地区コホート研究(愛媛県西部の1市5町の40才以上の住民を対象に愛媛大学公衆衛生学教室・小西正光教授らが調査)より。
「“夕方になると脚がむくんでだるくなる”“最近、脚がつりやすくなって…”。このような不調で通院する人が増えている」と話すのは、医師・林忍さん(「」内、以下同)。
「こうした女性を診察すると、実は下肢静脈瘤を患っているケースが多いのです」
最近では、40才以上の女性の約10人に1人にその症状がみられるというデータもある。症状に早めに気づき、進行を防ぐことが大切だ。以下、下肢静脈瘤について、学んでおこう。
人間の体には、動脈と静脈、2種類の血管があり、動脈は、心臓から送り出され、酸素や栄養素を含んだ血液を体の隅々まで届けている。一方の静脈は、不要な水分や老廃物を回収して、再び心臓へと戻る。
「足の静脈は、重力に逆らって、下から上へ心臓に向かって流れています。そのため、血液が逆流しないよう、静脈にのみ“弁”がついています。静脈の弁は、非常に薄い膜で、柔らかくて壊れやすい。この弁が壊れると、血液が逆流してしまい、静脈が蛇のように曲がりくねって、ボコボコと浮き上がります。これが、代表的な下肢静脈瘤です」
静脈の血液が逆流してうっ滞すると、初めは脚にむくみやだるさを感じる。一度壊れた弁は二度と戻らず、時間の経過とともに悪化していく。さらに重症化すると、皮膚炎や潰瘍になり、少しぶつかっただけで皮膚が破れて出血したり、かゆくて皮膚がただれたりすることもある。
「基本的には、良性の病気なので、足を切断する、歩けなくなる、死に至るといったことはありません。ですが、放置すれば、生活の質が下がるだけでなく、見た目が悪くなる病気でもあるので、早めの治療が大切です」
下肢静脈瘤は、男性よりも女性に多いのも特徴で、特に40代を超えて年齢を重ねるほど、発症しやすい。なかでも出産経験のある女性の、2人に1人が発症しているというデータもある。
妊娠時は、ホルモンの影響によって静脈が柔らかくなり、弁が壊れやすくなるとも。また、遺伝による影響も大きいという。
「立ち仕事をする人は発症しやすいので気をつけたいところ。教師や調理師、美容師、販売員などの職業の女性で、下肢静脈瘤を患っている人は特に多いのです」
下肢静脈瘤ができてしまったらどうすればいいのか?