ベストセラー『京都ぎらい』(井上章一著・朝日新書)に倣い、大特集した本誌・週刊ポスト前号(2016年8月19・26日号)の「名古屋ぎらい」。他県の住民にはどうしてもなじめない独自の文化や習慣を“愛を込めて”紹介したつもりだったが、残念ながら名古屋人の逆鱗に触れてしまったようで、本誌には芸能人や政治家からも反論が寄せられた。反響を肌で感じるべく、本誌は恐る恐る名古屋へ飛んだ。
JR名古屋駅にほど近い書店の店員は、「『名古屋ぎらい』という文字が目立つポストの新聞広告をお持ちになったお客様に『この雑誌はありますか』と聞かれました」という。また、モーニングで有名な名古屋のチェーン店「コメダ珈琲」に立ち寄ると、雑誌のラックに本誌が置かれていた。店の常連だという50代男性も怒り心頭だ。
「この記事の何が名古屋の人間を怒らせるか教えてやろうか。他県のものをパクっていると書いとるところだがや。何が三重県発祥よ。天むすが“広まった”発祥の地は名古屋でしょうが」
こうした反論の声は一般市民だけでなく、政界からも挙がっている。長く愛知県議を務め、現在は愛知1区選出の衆院議員である自民党の熊田裕通氏は「名古屋人は批判ばかり」という指摘を否定する。
「そう言わず、“目が肥えている”と思っていただきたい。例えば、お笑いの方々は名古屋を凄く重視すると聞いたことがあります。名古屋でウケたら全国でも必ずウケるといわれるほど、笑いに厳しいそうです」
また前号で紹介した名古屋独自の「開店祝いの花を持ち去る」習慣は、むしろ「良いことだ」と話す。
「記事で最も違和感を覚えたのが、この風習を“悪いこと”のように書かれていたことです。僕は“良いこと”だと思っています。だって、ずっと置いておけば花は枯れますよね。だから、祝いの花を持って行くことで、開店の喜びを皆さんで共有するという意味が出てくる。なぜ、それを批判するのか疑問ですね」