故きを温ねて新しきを知る。内閣改造や新都知事、そして天皇の生前退位といった最新ニュースの深層は、戦後政治史の経験と蓄積がなければ読み解けない。そこで、本誌恒例の老人党座談会を緊急招集した。村上正邦氏(84)、平野貞夫氏(80)、筆坂秀世氏(68)の3氏が存分に語り合った。
村上:安倍総理はいつまで天下を謳歌できるかねぇ。都知事選では小池百合子が勝った。
筆坂:だいたい覚悟が違うよ、小池百合子は。もしあれで負けてごらん。自民党から除名され、年齢的にも政界復帰なんて不可能ですよ。本当に退路を断って都知事選に挑んだわけで。
村上:あの状況で小池が勝つという見通しができないんだから、与党首脳たちの政治センスを疑うよ。世界では今は女の時代だ。アメリカの大統領選でもヒラリーが勝ちますよ。イギリスもドイツも女性首相でしょう。小池はちゃんと流れを見ている。
筆坂:あんな選挙、私は初めて見たよ。最終日の池袋の駅前、5000人を超していたけど、一人も組織票がいないんだよ。そんな選挙なんて、今まで例がないですよ。
平野:これは、既成政党に対するあきらめと、怒りですよ、都民の。
村上:ま、私は大嫌いだけどね、小池百合子(笑い)。
筆坂:へぇ、私は大好きですよ(笑い)。
平野:中国後漢時代の政治家、傅幹の言葉に、「徳に順じる者は盛え、徳に逆らう者は滅ぶ」ってのがあってね……。
──どういう意味ですか?
平野:人徳がない人は……というね。要するに、彼女はみんなを裏切ってきたってこと(笑い)。
村上:小池は本気で都政改革をやるとか、東京都連にメスを入れるとか叫んでるけど、できやしませんよ。
平野:森(喜朗)さんともあっさり仲直りした。
村上:そうそう。結局、自民党の方針に従ってる。もっとも、わが老人党の山口敏夫(元労働相)さんを含め、他の候補者も物足りなかったけどね。新宿まで山口さんの演説を見に行きましたよ。山口さんから電話がかかってきて、「村上さんを選挙責任者にしましたから」って言うから、「そうか、そうか」って(笑い)。
筆坂:私にも「一つ、演説をお願いします」って電話があった。勘弁してよ、なんで私が(笑い)。