いま食品メーカーの間で「減塩」がテーマになっている。減塩食品のあれこれを食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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スーパーの棚は人々の暮らしを映し出す鏡のようなものだ。地方に行けばその地域にしかない品が棚や冷蔵フェースに並んでいるし、季節や流行などを反映してさまざまな偏りが発生する。そして今年、さまざまなジャンルで「減塩」を謳ったアイテムが棚に並ぶようになった。
直接のきっかけのひとつは2015年に塩分の摂取目標量が改定されたことだろう。一日の摂取目標量でいうと、男性は2010年の基準に比較して1グラム減で8グラム未満に。女性も0.5グラム減で7グラム未満と改定された。
このニュースが流れて以降、各食品メーカーから続々と減塩タイプの食品が発売されている。ハウス食品は昨夏、同社の看板商品「バーモントカレー」に比べて塩分とカロリーを30%減らした「ヘルシーオカレー」(一食あたり塩分1.4グラム)を発売。大塚製薬も今年3月に「塩分が気になる方の欧風カレー」(一食あたり塩分は1グラム)を売り出した。
仙台の笹かまぼこの名店、阿部蒲鉾店も9月に笹かまぼこ業界初という「減塩 阿部の笹かまぼこ」を発売する。ちなみにかまぼこの場合、あのプリっとした食感の源には、魚のたんぱく質への塩の作用が欠かせない。同社では魚のうま味と歯ごたえを保つバランスを取るべく試行錯誤を繰り返し、塩分30%カットを実現したという。
塩分30%カットといえば、新潟のせんべい&スナックの雄、亀田製菓から発売される「減塩亀田の柿の種」もそう。たかがといっては叱られそうだが、柿の種の減塩に対して「構想9年」という力の入れかただ。実にふるっている。
そのほか、「塩分」ではしばしばやり玉に上げられる、みそ汁でも永谷園や宮坂醸造など複数のメーカーが減塩タイプの新商品を発売。「マルちゃん」ブランドを展開する東洋水産も9月に「昔ながらの中華そば」のチルド麺タイプで「塩分25%カット」を謳ったアイテムを投入する。
明らかにブームとなりつつある「減塩」。この4年で売上が5倍となったカルビーの「フルグラ」のように、そもそも塩分量が少ないアイテムでさえもパッケージに食塩量を表示することで「減塩施策」を明確に打ち出した。
「健康的」とされる和食において、唯一とも言われる難点が塩分量だった。日本人の塩分平均摂取量は男性10.9グラム、女性9.2グラム(平成26年国民健康・栄養調査)。果たして、続々発売される減塩アイテムは、日本人の「減塩」に寄与するのか。
ちなみに、WHO(世界保険機関)の目標量では一般成人が5グラム未満。アメリカのIOM(米国率科学アカデミー医学研究所)では3.8グラム、イギリスでは3グラムを目標量として設定している。道のりははるか、である。