遺骨を火葬場に任せる選択肢を提唱
お盆が過ぎたが、墓参りに“煩わしさ”を感じた人も少なくないだろう。掃除など、都会に住む人にとって、遠く離れた田舎にある墓の「管理」が重荷になっている現実がある。著書『もう親を捨てるしかない』で「親捨て」を提言した宗教学者の島田裕巳氏は、墓まで「捨ててしまいなさい」という。
少子高齢化や未婚、核家族化が進み、家族の力が弱体化した。それに伴い、多くの人にとって、先祖や親の墓を守ることが肉体的にも、財政的にも大きな負担となったと島田氏は指摘する。
実際、先祖代々の墓が引き継がれないまま供養されず、荒れ果てて放置される「無縁墓」は全国的に大きな社会問題になっている。
熊本県人吉市が2013年に市内の全墓地を調査したところ、約4割が無縁墓だった。日本中の多くの自治体が同様の問題を抱え、無縁墓の扱いに苦慮している。都内在住の60代男性も困った顔を浮かべる。
「四国にある親の墓の扱いに困っています。手入れをしてくれていた叔母が去年体調を崩し、周りに引き継ぐ人は誰もいない。墓のためだけに高い交通費を出して帰省するわけにもいかず、いっそのこと“墓じまい”をして、東京に引き取ろうかと考えています」
「墓を捨てる」と言っても、実際に墓を放置するわけにもいかない。そのため、この男性のようにいまある故郷の墓から、現住所に近い新しい墓地に遺骨を移す「改葬」が増加している。
現在の日本の葬送手段はほぼ100%が火葬であり、葬儀後に残った遺骨は原則として遺族が管理しなくてはならない。その最も一般的な方法が、墓を建てることだった。
それが重荷になり始めているいま、墓を必要としない「散骨」を望む人も増えている。だが日本では、散骨は合法でも違法でもなく、ルールとして確立していないのが現状だ。