長生きはしたいが、病気にはなりたくない──誰もがもつ健康への願い。だが、「介護の必要などがなく生活できる期間」を表す健康寿命にも、大きな地域差があることを、データは示している。
「日本人は平均寿命の長さで知られるが、本当に大事なのは健康寿命。この寿命を見ると、実は日本は“不健康長寿大国”なのです」──長尾クリニックの長尾和宏院長はこう強調する。
厚労省によると2013年の日本人の健康寿命は、男性71. 19歳、 女性74. 21歳。平均寿命との差は男性で約9歳、女性で約12歳となる。日本人は亡くなるまでの10年前後を要介護状態で過ごすのだ。
そうした中、健康寿命の都道府県別ランキングの1位は男女とも山梨だった。以下、男性は沖縄、静岡、石川、女性は静岡、秋田、宮崎が続く。
「要介護になるきっかけの多くは糖尿病や認知症です。自然が多い山梨や静岡では、日頃から体をよく動かして野菜を多く食べる生活習慣があり、それが健康寿命の長短に影響してくると考えられます」(長尾氏)
健康寿命には、人との「つながり」もカギとなる。山梨には、各人がお金を出しあって旅行や飲み会をする「無尽」という昔ながらの習慣が残っている。
「現在も高齢者を中心に無尽が盛んです。地域の人とのつながりが健康寿命の長さにつながるのでは」(山梨県福祉保健部健康増進課)
静岡も高齢者の就業率が高く、地域のボランティアなど社会活動が盛んだ。
一方、かつて日本一の長寿県として知られた沖縄は「不健康化」が急速に進む。平均寿命は女性3位、男性30位まで下落し、急性心筋梗塞や脳血管疾患などによる現役世代の死亡率が高い。ライフスタイルの欧米化が顕著で、肥満者の割合も全国トップクラスになった。
「外食やコンビニ中心の食事と運動不足は生活習慣病につながる。沖縄の凋落は“日本の未来”を暗示しているように見えます」(長尾氏)
※SAPIO2016年9月号