誰しも若い頃、胸を熱くし、夢中になった漫画があったことだろう。しかし多忙になるにつれ、漫画を手に取る機会も少なくなっていく。人生も折り返しを過ぎた今こそ、再び読み始めてはどうだろう。きっとあなたの老後は豊かなものになるはずだ──。
そこで本誌では、各界の「漫画通」が薦める作品を「感動部門」、「政治・経済・社会部門」、「歴史部門」、「スポーツ部門」に分けてピックアップ。面白く、しかも知識がつくというサラリーマンにピッタリの漫画を紹介する。
毎年のヒット作を表彰する『マンガ大賞』の発起人で、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏は、「投資本よりも、経済の仕組みが頭に入ってくる」として、『インベスターZ』(三田紀房、講談社刊)を推す。経済漫画といえば、サラリーマンや起業家が主人公というのがお決まりだが、同作の主人公は中学生だ。
「学校の“投資部”に所属する中学生が『投資は遊びだ。ゲームを楽しめ』といって、運用資金3000億円をバンバン動かす非現実的な設定ですが、内容は、ウォーレン・バフェット氏や堀江貴文氏らの実例を引用する本格派。漫画が投資の指南書の挿絵の役割を果たしてるから分かりやすい」
防衛相や自民党幹事長などを歴任し、漫画愛好家としても知られる石破茂・代議士は、『加治隆介の議』(講談社刊)と『黄昏流星群』(小学館刊)という、弘兼憲史氏の代表作を挙げた。
「政治漫画といえば『加治隆介の議』でしょう。連載が始まった1991年は、僕はまだ当選2回目。首相まで上り詰めた主人公・加治隆介は憧れだったなあ。『黄昏流星群』は、60~70代なら共感できる人が多い作品ですよ。同窓会でバッタリ会った学生時代の同級生と恋に落ちるなんて……いいよねぇ~。あっ、僕がそうだという訳じゃないですよ」
そんな石破氏が「もう一つ政治漫画を挙げたい」と熱弁を奮うのが『サンクチュアリ』(原作・史村翔、画・池上遼一、小学館刊)だ。
「『加治隆介の議』と違って主人公が総理になる直前で死んでしまう。かっこ良い台詞が読み所だな」
お気に入りは、当選1期目の主人公が先輩議員に「あんたは派閥の番頭になるのが目的で代議士になったんですか。あんたたち団塊の世代がナマクラだから、今の政治ができあがっちまったんだよ」と言い放つシーンだ。
「痛快だよね。こうありたいと思いますよ。出てくる台詞のいくつかは拝借して、演説で使った気がする。どれを使ったか? それはいえないな(笑い)」(石破氏)
※週刊ポスト2016年9月2日号