いまや全国的に定着した「名古屋めし」。ひつまぶし、天むす、トンテキなどが有名だが、名古屋には我々が知らない食文化が、まだまだあった──。記者がまず訪れたのは、名古屋市内だけで131店舗あり、名古屋人の心のオアシスとして知られる「コメダ珈琲」だ。
名古屋人の休日は、家族で朝からコメダ珈琲に行き、親子で店内にある中日スポーツを奪い合うのが最もポピュラーな過ごし方だという。夏休み中ということもあってか、店内は多くの親子連れで溢れていた。お目当てはもちろん、豪華なモーニングだ。『名古屋あるある』の共著者で自身も名古屋出身のライター・川合登志和氏が解説する。
「名古屋のモーニングはドリンク1杯の注文で、トースト、ゆで卵、サラダまでついてくるのが常識です。そもそも『他の店はもっと種類が多かった』と主張するイチャモン好きな名古屋人に対応して、名古屋の飲食店ではつまみやおまけが沢山つきます。名古屋人はケチなので、袋入りのつまみを開けずに持って帰ることが多い」
これは決して誇張ではない。本誌前号で「つまみ持ち帰り」を報じると、記事を読んだ名古屋人から「えっ! 他の地域ではやらないの?」と驚きの声がツイッター上に書き込まれた。まさに「日本の常識は名古屋の非常識」なのである。
コメダ珈琲で多くの客が注文していたモーニングの一品が小倉トーストだ。
「トーストにバターを塗り、その上からあんこをたっぷりとかけた食べ物です。その昔、トーストをぜんざいに浸したところから考案された。名古屋人はあずきが大好きで、コーヒーにも砂糖の代わりに甘いあずきを入れる人が多い。家庭には、ゆであずきの缶が常備してあります」(川合氏)
※週刊ポスト2016年9月9日号