公開中の映画『後妻業の女』で悪女を熱演している女優・大竹しのぶさん(59才)。舞台で迫真の演技を見せる彼女に、インタビューを行った。インタビュー時は、ちょうど東京都知事選投票日の直前だった。話は選挙の話題へ。
「都知事選、どうなるのでしょうね。息子や娘に『どうしよう』、『誰に入れたらいいの?』と聞かれても、『どうしよう』としか返せない。3人で悩んでいます。開票の日でなく、もっと事前に選挙の特番を組んでいろんな候補を取り上げてほしい。まるで小池(百合子)さんと鳥越(俊太郎)さん、増田(寛也)さんしかいないみたいな状況になって、他の候補者の考えが全然わからない。世の中の動きが私たちの気持ちとズレていると感じる中で、選択しようがないですよね」(大竹さん・以下「」内同)
昨年の参院での安保法案可決の数日前には、国会前の反対集会に参加した。これまでも、新聞やラジオで、平和への思いを強く訴えてきた大竹さん。人気者ゆえ、思想信条を口にすることへの圧力もあったのでは。
「2014年に、井上ひさし先生の舞台『太鼓たたいて笛ふいて』に出演しました。作家の林芙美子の生涯を描き、戦争反対を強く訴える物語です。そのときは4度目の上演でしたが、朝日新聞の取材で、2002年の初演時に、井上先生が出演者の子どもに『これは昔の話じゃない。10年後の日本だからね』とおっしゃった話をして、その通りの日本が近づいてきていると、言ったのですね。そうしたらテレビ局に、そんな話は1回だけにしてください、と言われましたね」
それでも発言し続けるのは。
「もう60才になろうという大人です(笑い)。年齢を意識するのであれば、自分で自分の責任をとれる年だし、逆に自分の意志をきちんと言えないとおかしい。幸い、私は作品を通じてだったり、インタビューや新聞のコラム、ラジオという場をもらえているのだから、きちんと自分の思いは発信していきたいのです。
今、おかしなことがいっぱい起こりすぎているでしょ。子宮頸がんのワクチンの問題にしたって、ニュースでパッと報道されただけで、国の一番の大本は何を考えているのか全然見えない。知らない間に税金も上がっている。メディア側も、舛添(要一)さんの問題を延々報道するんじゃなくて、もっと報道すべきことが他にあるのではと思いますよね。きちんとした大人がストップかけないと、この国はどうにかなっていくのではという危惧は大きいです」
こうした問題は、息子や娘たちと語り合うのが大竹家の習いだとか。
「この間も、都民税の通知が来たとき、3人の分を並べて、『はぁ~、この家からこれだけのお金が出ていってるんだ』『ちゃんと使ってもらいたいよね』みたいな話は親子でしました。仲いい、ですか? まあ、息子や娘の友達とも普通にご飯食べたりしますよね。元ボーイフレンドともつきあいが続いていて、『なんでお母さんが会うの』と言われたり(笑い)。
いろいろな人と縁あって出会ったり、別れたりしても、せっかくだから、みんなで仲よく楽しくやった方がいいかなと。でも、パートナーを見つけて一緒に暮らすことは、今は全く望んでいません。人生で一人暮らしをしたことが一度もないので、一人暮らしに憧れています。この年で憧れてどうするんだ(笑い)」