物言わぬペットのとっさのトラブルに、どう対処すればいいのか、悩んだ経験がある人は多いのでは?
「生後2か月のチワワを購入しました。ところが後日、先天性の膝蓋骨脱臼が判明。ペットショップとの契約書には、6か月以内に亡くなった場合の補償については書かれていましたが、病気の場合でも治療費の請求などはできるのでしょうか?」(京都府・AI・31才・医療関係)
この悩みに、共著『ペットのトラブル相談Q&A』(民事法研究会)などがある、猫ペットに関する事件、トラブルなども取り扱う弁護士・杉村亜紀子さんが答えてくれた。
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ペットショップなどの販売業者は、健康上の問題がない動物を売る義務があり、繁殖業者がペットショップに販売する場合も、遺伝性疾患の説明をすることになっています。それでも、販売後に遺伝性疾患や先天性の異常が見つかることはよくあります。この場合、ペットショップは買い主に対し、法的な責任を負うことになります。
一般的にペットは、「この子を迎えよう」と選んで購入すると思います。このように、他に代わりがない“特定物”の売買を“特定物売買”といい、マイホームの購入などもこれに該当します。
特定物売買は、たとえ商品に欠陥が判明しても、代わりの物がありません。そのため、売り主(ペットショップ)は、“瑕疵担保責任”を負うことになります。
具体的には、ワンちゃんの病状によって、飼えない、あるいは、飼育が困難な場合、契約を解除し、返品・返金の対応をしてもらえます。
AIさん家のワンちゃんの場合、膝蓋骨脱臼があったからといって、今後飼えないというわけではないので、返品・返金は難しく、損害賠償請求をすることになります。
傷や病気があるペットの損害賠償については、購入価格を超える賠償は認められないのが一般的です。購入代金の一部なら返金してもらえますが、今までやこれからの治療費全額の賠償を受け取るのは難しいでしょう。
また、ペットショップによっては、売買契約書の中に、引渡し後に先天的な異常が発見された場合についての補償内容を具体的に定めているところもあります。必ず、契約前に契約書の内容を確認するようにしてください。
法律上は損害賠償請求が可能だったとしても、ペットショップとの交渉や裁判は大変なものです。購入の際には、必ずその子の健康状態をきちんと確認することが大切です。
とはいえ、最近は生後間もない子犬を販売するケースが多く、病状が後から出てくることも少なくありません。ワンちゃんに罪はありません。たとえ、購入後に病気が発見されたとしても、最後まで面倒をみる覚悟をもって、家に迎えてあげてください。
※女性セブン2016年9月8日号