人の不幸は蜜の味とはいうものの、あまりに生々しい不幸話だと聞きたくもなくなってくるというもの。歯科技工士の女性・Yさん(34才)が、友人の笑えない不幸話を紹介する。
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30過ぎて、レストラン経営の羽振りのいい男と結婚したT子。思えばあの時が、彼女の絶頂期だったのね。
その半年後、夫の前妻から裁判を起こされ、貯金も土地もほぼ前妻に渡って、一家は古いアパート暮らし。その直後に妊娠して、父親が倒れ、実家でボヤ騒ぎ。頼りの母親は交通事故で脚を骨折して…。
会えば慰めようがない不幸ばかり聞かされ、最近ではスーパーでT子の姿を見ると足を速めて逃げるようになったわよ。そうしたら、先日、「何逃げてんのよ」と後ろから声をかけられ、思わず「ヒィーッ」と悲鳴を上げちゃった。
気味が悪いことに、T子って不幸になればなるほど、口調も表情も明るくカランとなるのよ。「笑っていれば大丈夫だって」って。その笑顔が、怖くて怖くて。
※女性セブン2016年9月8日号