古くから日本家屋で愛されてきた畳が、新たな姿に生まれ変わり、今、注目を集めている。それが“畳の財布”だ。
考案したのは、創業120年の「織田畳店」(奈良県)4代目当主の織田理(おさむ)さん。同社のブランドマネージャーを務める妻の吉美さんはこう話す。
「畳は日本の伝統的な床材ですが、最近は和室が減少。畳の需要も減ってしまい、い草農家や加工を行う畳店が次々と廃業に追い込まれています。“このままでは畳文化が衰退してしまう”“畳を後世に残したい”と、夫婦でよく話し合っていました。
それで、“畳の良さをもっと多くの人にアピールするには”“畳を新しい形で蘇らせるには”と考え続けた結果、これまでの“敷く畳”のイメージに執着せず、気軽に持ち歩ける畳表を使った財布を作ろうと思いついたんです」(吉美さん、以下「」内同)
「織田たたみ天然染い草 ラウンド財布」(雛<Hiina>シリーズ 菖蒲<群青>縦11×横20×厚さ3cm、重さ230.5g、4万3200円)が完成形。最初は家庭用ミシンを使い、夫婦で試作を開始。なんとか形にはなっても途中で針が折れたり、糸が切れたりして、思うように縫製できない。さらにミシンや素材についての研究と試行錯誤を重ねてみたものの、商品化できるほどのものは作れなかった。
「私たちは畳作りの職人ではありますが、財布作りは素人。確実にお客様に喜んでもらうためには、やはりプロの力が必要と気づきました。そこで財布職人のかたに依頼し、さらに試作を重ねました」
そうして構想から約2年。2015年3月に「葵シリーズ」が誕生。今年6月には国産い草を使用した「雛シリーズ」を発表した。財布に加工するのは同じ奈良の財布職人「Rafmani」の永井博さん。すべて手作業で製作しており、1か月でできるのは、各種10個程度だという。
「熊本県のい草を使い、ていねいに染め上げた畳表を、シンプルな和モダン財布に仕上げています」
畳ならではの優しくなめらかな手触りと、い草の抗菌・消臭効果。い草独特の森林浴のような香りの癒し効果も人気にひと役買っている。
※女性セブン2016年9月8日号