中国の習近平国家主席が党最高指導者に就任後の2012年11月に反腐敗運動を打ち出して以来、少なくとも15人の中国人民解放軍の将校級の高級幹部が汚職事件に絡んで、飛び降り自殺によって命を絶っていたことが分かった。また、最近でも胡錦濤政権時代に軍最高幹部を務めた上将2人が腐敗容疑で身柄を拘束されており、習近平指導部の反腐敗闘争による軍への追及が熾烈なものになっている。
習氏は来年秋の第19回党大会をにらんで、軍権掌握のため、江沢民元主席に連なる軍最高幹部の追い落としを徹底しているものとみられる。米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」が伝えた。
8月13日午後。場所は北京市郊外の中国海軍総本部内の海軍後勤務部企業管理センタービル。その屋上から、李舗文・同センター主任(長)が飛び降り自殺した。
同センターは海軍の出入り企業を統括する部門で、李はその最高責任者だったことから、業者が海軍の事業を受注するために、李に賄賂を贈ったとみられる。このようなケースでの自殺事件は軍内では珍しくない。
2014年11月、やはり李と同じ海軍総本部内のビルから、馬発祥・海軍中将が飛び降り自殺をしたほか、寧波市の南海艦隊総司令部のビルから、姜中華・同艦隊装備部長(少将)が飛び降り自殺。2015年2月10日には中央軍事委総参謀部作戦部の劉子栄・空軍管理局長も飛び降り自殺で命を絶った。
なぜ、これだけ自殺が多いのかというと、江沢民政権時代に遡る。当時はトウ小平氏ら軍の長老らによって軍事改革の必要性が叫ばれ、軍事機構改革などにより、毎年の防衛予算が二ケタ増となった。これに伴い軍の待遇改善や軍絡みの建設プロジェクトが急増し、特に後勤部門や装備部門の担当者と業者の癒着が公然化し軍内で腐敗が横行した。
ところが、習近平指導部の発足によって、腐敗事件が徹底的に取り締まることになったことから、これまで聖域扱いされた軍内でも、逮捕者が多く出ることになったとみられる。
習氏は軍内の内部会議で、「ビルから飛び降りて死ぬことは、軍人の血を汚す行為である。人民、党、軍隊および国家の利益に背くものだ」と厳しく断罪したという。
しかし、習氏が反腐敗闘争を権力闘争に利用しているのは明らか。江沢民元主席の腹心だった郭伯雄、徐才厚・両中央軍事委副主席が逮捕されたほか、最近も李継耐・前総政治部主任(上将)と寥錫龍・前総装備部主任(同)が党規律違反などにより身柄を拘束されており、「これも権力闘争の一環だ」と「博聞新聞網」は指摘している。