高齢者の4人に1人が友達ゼロ──日本の老人は世界的に見ても友達が少ない、という調査結果がある(「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査=内閣府が5年毎に実施」)。ここでの「家族以外に相談あるいは世話をし合う親しい友人がいるか?」という問いに対し、25.9%が「いない」と回答したのだ。つまり、これは「友達ゼロ」を意味するが、アメリカは11.9%、ドイツは17.1%、スウェーデンは8.9%となっている。「恥の文化」のため他者を頼りにくいという指摘もある。
もっとも、「家族もいるし、年を取ったら友達なんかいなくたっていい」という人もいるかもしれない。しかし、気づかないうちに、実はさまざまな不利益を被っているのが現実である。心理学が専門の丹野宏昭・東京福祉大学専任講師はこう話す。
「人間関係ネットワークが希薄だと寿命が短くなるとする調査結果が世界中にあります。友人からさまざまなサポートを受けられると、ストレスの緩衝効果が大きくなると考えられています。また、高齢者の場合、他者との会話によって、認知機能の維持(ボケ防止)にもつながります」
交流できる友人がいないと、認知症を発症する可能性も高まるというのだ。そうなれば、家族など周囲への負担も大きくなる。より具体的なリスクもあると、あるNPO法人関係者が語る。
「私たちは、地元に友人がいないなどの事情がある方々を支援しているのですが、元気に一人暮らしをしていても、突然、脳梗塞を患って施設に入らざるをえなくなることもある。そんなとき、周りに親しい友人がいなくて保証人がいないと、施設に入れないのです」
そのようなケースは稀かもしれないが、74歳の男性はこう語る。
「まだまだ元気だけど、近い将来施設に入ることも考えている。しかし、どの施設が良いか分からないんです。妻は、同世代の友達がたくさんおり、お茶をしながら近所の施設やデイサービスの評判などを詳しく聞いてきているようですが、私にはいないので」
高齢者にとっての価値ある情報は横のつながり、つまり友達同士の口コミで広がることが多い。友達がいないと、そうした情報から疎外されてしまう。