災害時に取るべきアクションや避難方法は、時代によって大きく変化する。たとえば、『地震だ、火を消せ』と、昔から標語のようにいわれてきた。大きな揺れを感じたら、真っ先に台所のガスコンロなどの火を消すべきだと思っている人も多いだろう。
しかし、最近のガスメーターは震度5弱以上の揺れを感知すると、自動的に火が消える構造になっている。火の側では、熱い鍋がひっくり返ったりして大火傷してしまう危険もあるので、揺れが収まるまでは近づかないのが賢明だ。NPO法人ママプラグ副理事長の冨川万美さんは、こう話す。
「目の前にガスコンロがある場合は止めればいいですが、危険を冒してまで火の元を確認しに行く必要はありません。そもそも台所自体、食器やびん、包丁など、凶器に代わる道具がたくさんある危険地帯ですから、なるべく離れたほうがいいのです。自分の身を守ることを最優先に行動してください」
実は地震の際に気をつけるべきは、ガスよりも電気による出火だ。家電使用時に地震が起きた場合、スイッチを入れたまま避難してしまうと、電気が復旧した際に通電火災が起きてしまう。ブレーカーを落とすことで防げるが、地震の際は動転してしまって忘れることが多い。また、家具などが散乱し、なかなかブレーカーまでたどり着けない可能性もある。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんは言う。
「揺れを感知すると自動でブレーカーが落ちる感震ブレーカーを設置しておけば、通電時の火災のリスクも避けられます。手軽に取り付けられるので、おすすめです」
比較的新しい建物では、全壊する確率よりも倒れてくる家具などで負傷したり、閉じ込められる危険性の方が高い。地震が起きたとき、移動できるのであれば、耐震性が高く、家具の転倒や落下物の心配もない玄関付近がベストだ。
「建物が倒壊したのに、玄関だけ残ったケースも多々あります。外への脱出もしやすく、最も安全で重要なゾーンといえますから、日ごろから整理整頓をしておきましょう。オブジェや壺、鏡などを玄関に置いている家庭も多いですが、割れるとけがをしてしまい危険です」(和田さん)
非常持ち出し袋も、玄関に置いておくのがよい。避難を優先して外に出て、落ち着いてから取りに戻る場合、玄関にあればすぐに取り出せる。
「非常持ち出し袋は玄関以外にもリビングや車、庭の物置など、いろいろな場所に置いておくと、そのときいちばん取りに行きやすいものを選択できるので、安心です」(和田さん)
※女性セブン2016年9月15日号