地震が起きたらまず優先すべきは、生き延びること。防災訓練で揺れを感じたら机の下に隠れると教わった人も多いだろうが、最近はこれが危険であるという説もある。大きな家具が倒れて周囲がふさがれ、机の下に閉じ込められる可能性があるからだ。
トイレなど狭い場所へ逃げ込むというのも、旧耐震建築時代の防災マニュアルなので、改めるべき。ドアが歪んで開かなくなる可能性がある。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんは言う。
「揺れを感じたら、まず頭を守り、転倒落下物の危険がない場所に移動します。余裕があれば、避難経路を確保してください。実際に地震が起きたら、人はすぐに行動できません。発災後わずか1分間の判断が生死を分けますから、普段から地震が来たらどう動くか、シミュレーションしておくことがとても大事です」
地震が起きると断水や停電により、多くの水洗トイレは水が流れなくなる。こんな時にはバケツなどに水を汲み、直接タンクや便器内へ流せば、排泄物が流れると考えている人が多いが、これも大きな間違いだ。NPO法人ママプラグ副理事長の冨川万美さんは、地震によって下水管が破裂して、汚水が漏れたり、逆流する可能性を指摘する。
「特に、マンションの場合は要注意。1階から最上階まで排水管がつながっているため、排水管が壊れているのに水を流すと、下層階に大きな被害が出てしまいます。配水管の損傷確認ができるまでは、トイレの水は流さないのが鉄則です。簡易トイレを準備しておき、汚物の処理は自分で行いましょう」
熊本地震では、1981年施行の新耐震基準をクリアした住宅が複数倒壊した。さらには耐震基準が強化された2000年以降に建築した建物にも倒壊などの被害が多く出て、衝撃が走った。
「地盤が悪く、地割れが起きてしまったのが倒壊の原因でした。建物が厳しい基準を通っていても、熊本地震のように、震度7が2度も来てしまった場合までは、想定していないことが多いのです。それに、土地の性質によって倒壊してしまう恐れもあります」(和田さん)
海岸は津波、川は氾濫、山間は土砂など、暮らしている場所によって、災害時のリスクはさまざま。液状化しやすい土地は、ライフラインの復旧まで時間がかかるとも考えられる。自分の住んでいる環境を把握し、リスクに応じた対策を考えたい。
※女性セブン2016年9月15日号