7月29日の公開以来、興行収入53億円を超える大ヒットとなっている映画『シン・ゴジラ』。ゴジラファンはもとより、これまで見たことがなかった女性の間でも、「何度も見たくなる」「語りたくなる」とリピーター続出。その魅力はどこにあるのだろうか。
【先が見えないドキドキ感が味わえる】
4回見たというゲーム作家の柴尾英令さんは、ヒットの要因の1つを次のように語る。
「今回のゴジラは、“世界中の誰もが遭遇したことのない未知の巨大生物”として登場します。つまり、これまで作られてきたゴジラが、この作品でリセットされて、新たな気持ちで見ることができる。だから、これまでなじみのなかった人にも受け入れられたのでしょう」
長谷川博己演じる矢口蘭堂内閣府官房副長官を中心に設立された組織名も『巨大不明生物特設災害対策本部(以下、巨災対)』。映画の中でゴジラは、怪獣でもなく、あくまで巨大生物という設定。これがゴジラなのか? どうなるのか? という新たなドキドキ感も味わえるのだ。
【日本のゴジラが帰ってきた!!】
1998年と2014年にはハリウッド版『ゴジラ』が制作されているが、正直、日本人の思うゴジラのイメージとは違うものだった。そんな思いの残る中、今回、12年ぶりに日本版が制作されたことで“見てみよう”と思った人が増えたよう。ネットニュース編集者・中川淳一郎さんもその1人だ。
「2014年のハリウッド版は、ゴジラが登場するまでに時間がかかったし、最終的に全容もよくわからなかった。しかし、今回はこれまで日本が作ってきたシリーズと同様、早々に登場。“日本のゴジラが帰ってきたんだ!”と思いましたね」(中川さん)
脚本も務めた庵野秀明総監督は、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズを世に送り出した奇才。アニメや特撮をこよなく愛し、妻で漫画家の安野モヨコのエッセイ漫画でたびたび、そのオタクぶりが暴露されるほど。特撮愛が随所に見られ、ファンの心を鷲掴みにしている。
【“シン”に込められた意味は1つではない】
見た人の間で、必ず出る話題が、「タイトルの“シン”には、どんな意味があるの?」ということ。カタカナにした理由を、同作のプロデューサーで東宝映像本部映画企画部部長の山内章弘さんは、以下のように説明する。
「これは、庵野総監督のアイディアです。“新、真、神…”見る人にさまざまなことを感じてもらいたいということで、正解があるわけではありません」
【ゴジラがわが町にやってくる!?】
ゴジラが最初に出現するのは東京湾のアクアライン。そこから蒲田、品川へ上陸し、自衛隊の攻撃をもろともせずに東京を破壊していく。
「SNSでも“うちの自宅は蒲田だから、開始早々、ゴジラの襲撃に遭った”、“うちはセーフだった”などの投稿をする人もいて、みんなどこかでわが町にゴジラが来てくれることを喜んでいるようでした。東京や近郊の建物や乗り物、駅などが出てくるので、映画なのに自分の世界の出来事のように感じられたのでしょう」(柴尾さん)
見慣れた場所などとともに、初代ゴジラはじめ、さまざまな作品へのオマージが詰め込まれているのも見どころだ。